2017 Fiscal Year Research-status Report
Topological manipulation of adiabatic quantum evolution
Project/Area Number |
17K05584
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田中 篤司 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (20323264)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新奇な量子ホロノミー / 断熱サイクル / 準位反転 / 量子古典対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では断熱量子制御の新しい考えとして、新奇な量子ホロノミーと呼ばれる量子状態変化を利用したものを取り上げている。新奇な量子ホロノミーは自己共役な点状ポテンシャルに関する数理物理学の研究から見いだされたものであるが、周期撃力下のフロケ系やLieb-Liniger模型と呼ばれる厳密可解な多体系等、いくつかの物理系での具体例が見いだされてきた。近年の顕著な理論的成果は、新奇な量子ホロノミーの数理的背景に被覆空間の位相幾何学的な構造を同定したことである。 本年度は、弱く相互作用するボーズ粒子を捕捉したポテンシャルに鋭いポテンシャル障壁を印加することで作られる断熱サイクルを解析した。この系は、一体問題の場合は、いくつかの断熱サイクルが新奇な量子ホロノミーを引き起こす。しかし、多体系では、ある特別な断熱サイクルでのみ新奇な量子ホロノミーが生き残ることが予想されていた。これについて、平均場近似の枠内での解析から、相互作用がある程度弱い限りにおいて一体形で見られていた新奇な量子ホロノミーが実現することを確認した。摂動論的な議論からは新奇な量子ホロノミーが不安定だと思われた断熱サイクルでも、数値実験の範囲内で観測可能であったことは特筆すべきことである。 一方、平均場近似の出発点となる非線形シュレディンガー方程式は、古典的なハミルトン系と解釈できることから、新奇な量子ホロノミーの古典対応物を探索した。この結果、近可積分キックドトップにおいて、古典対応物を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度の課題は、新奇な量子ホロノミーを起こし得る多体系を見いだすことであったが、この点については達成できた。一方、未解決の点として、強い粒子間相互作用によって新奇な量子ホロノミーが破壊される場合の臨界点や破壊される機構は明らかではない。また、フロケ系での同様の研究は未着手となった。新奇な量子ホロノミーの古典的な対応物が見いだされたことは予想外の結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究で残されている課題である、粒子間相互作用による新奇な量子ホロノミーの抑圧について、その臨界結合定数や背後にある物理的な機構を明らかにしたい。一つの方針は数値計算をより系統的に行なうことである。また、模型を少数のモードに縮約して解析することも検討したい。昨年度に手のつかなかった、フロケ多体系での解析も推進していきたい。一方、数値実験で得られた新奇な量子ホロノミーの実験的検証や応用のためには外界からの擾乱や散逸からの影響を論じていくことが必要である。まずは、このような議論に適した模型の構築を進めたい。新奇な量子ホロノミーの古典的な対応物については、特殊な数例のみが見つかった段階と考えるべきであり、具体例を探索するとともにその理解を深めていきたい。
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Causes of Carryover |
ワークステーションの購入を予定していたが、数値計算コードの開発段階であったため既存の設備で対応できた。本年度は、広いパラメーター領域での網羅的な数値計算を必要とするためにワークステーションを購入する予定。
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