2017 Fiscal Year Research-status Report
Non-Hermitian degeneracy in Liouvillian dynamics and nonequilibrium irreversible phenomena
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17K05585
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
神吉 一樹 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10264821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80236588)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 例外点 / 非エルミート縮退 / 光吸収スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
開放量子系のハミルトニアンの例外点では、エネルギー固有値だけでなく固有状態も一致する非エルミート縮退が起こり、ハミルトニアンがJordanブロック構造をもつことで特徴づけられる。これまでの研究で、我々は、全系ハミルトニアンの拡張ヒルベルト空間における基底により厳密なJordanブロックが表現できることを示した。また、例外点でのJordanブロックに連続的につながる拡張Jordan形式を導入した。これらの知見を基に、例外点の存在が物理現象として観測される可能性を考察するために、共鳴状態を用いた光吸収スペクトルの表式に注目した。内殻電子励起による光吸収スペクトルの形状は、共鳴状態への直接遷移の重ね合わせとしてよく再現できることが示された。ところが、2つの共鳴状態が一致する例外点においては、共鳴状態のノルムがゼロとなる(自己直交性)ので、共鳴状態を用いた光吸収スペクトルの表現は破綻する。この問題に対して、光吸収スペクトルの表式の発散項は打ち消し合って、例外点の極限では有限の寄与が残ることを示した。また、拡張Jordan基底を用いた発散を含まない光吸収スペクトルの表式を導出した。さらに、例外点ではレソルベントの共鳴極は2位の極になるので、光吸収スペクトルの先鋭化が起こることを指摘した。 光で照射した分子鎖系の緩和過程において、光の強度などのパラメータを変えていったときに、指数関数的な減衰から振動減衰への質的な変化を伴う動的相転移が起こることが見出されていた。この問題に対して、以下のことを明らかにした。動的相転移が起こるためには、輻射場が特定の2準位間の遷移を引き起こすようなピークをもつ分布をもっていることが必要である。緩和過程が振動減衰である領域においては、非平衡定常状態の分布は詳細釣合いの条件を強く破っており、その結果エネルギー流は大きな値をもつ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開放量子系のハミルトニアンの例外点については理解が進んだが、リウビリアンについては大きな進展がなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
開放量子系において、レソルベントの共鳴極が2位の極になることによる光吸収スペクトルの先鋭化を観測する可能性を追求する。また、他の物理現象に例外点の特徴がどのように現れるかを考察する。 有効リウビリアンに対して見出されていた例外点が、全系のリウビリアンの例外点としても存在するのかどうかを明らかにする。そのために、有効リウビリアンの固有値依存性を残した非線形固有値問題を分析する。 1次元分子鎖中を伝搬する励起子による非平衡輸送過程を微視的力学原理に基づくリウビル演算子の複素固有値問題の視点から分析する。空間的に不均一な場合の時間発展においては、PT対称性があるときとないときの両方の状況が現れ、PT対称性のあるときにはPT対称性の破れにともない非エルミート縮退が起こる。そこで、PT対称性があるときとないときを比較することにより、系の時間発展に例外点が及ぼす影響を調べる。
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Causes of Carryover |
見積もりの誤差により若干の次年度使用額が生じた。消耗品費として使用する。
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