2018 Fiscal Year Research-status Report
Non-Hermitian degeneracy in Liouvillian dynamics and nonequilibrium irreversible phenomena
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17K05585
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
神吉 一樹 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10264821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80236588)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非平衡統計力学 / 例外点 / 非エルミート |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、非エルミートな時間発展演算子で記述される系の物理が関心を集めている。非エルミート演算子特有の性質として、固有ベクトルによるスペクトル分解が破綻する場合がある。このとき、固有値ばかりでなく固有ベクトルが一致するので固有ベクトルで空間を張ることはできず、演算子はJordanブロックの構造をもつ。パラメータ空間のこの点は、数学的な文脈では例外点と名付けられていたが、この現象は非エルミート縮退とも呼ばれている。そして、そこで1つの固有状態が複数に分裂し、固有値や固有ベクトルがパラメータについて非解析的な多価関数となる分岐点になっている。これまで非エルミート縮退は現象論的に非エルミート性を導入したハミルトニアンに基づいて調べられルことが多かったが、我々は注目系に対する環境まで含めた全系のハミルトニアンまたはリウビリアンの複素固有値をもつ固有状態のもつ性質として理解することを目指して研究を行なっている。2018年度は特に1次元量子ローレンツ気体の複素固有値問題について、有効リウビリアンが固有値依存性をもつことによる非線形性まで含めて分析を行った。その結果、これまでに非線形性を無視していた理論において見出されていた例外点が、非線形性を取り入れても存在することを示した。 調和振動子が輻射場と結合した系について、演算子のハイゼンベルクの運動方程式の複素固有値問題の定式化を行った。仮想遷移項を含めると、ボゴリューボフ変換による固有モードの演算子は、非エルミート行列を対角化することにより得られることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1次元量子ローレンツ気体の有効リウビリアンの非線形固有値問題の近似的な解が得られたが、用いた近似の有効範囲に関して完全な理解には達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
1次元量子ローレンツ気体の非線形固有値問題の近似解の有効性を明らかにするとともに、ポーラロン系などの類似の問題への適用や拡張を行う。 調和振動子が輻射場と結合した系について、演算子のハイゼンベルクの運動方程式の複素固有値問題を解く。 例外点における光吸収の理論を発展させ、例外点における透過スペクトルの振る舞いを明らかにする。
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Causes of Carryover |
PCを購入することを予定していたが、十分な額が残らなかったため、翌年度に購入することにした。
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