2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05587
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齊藤 圭司 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (90312983)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非平衡統計物理学 / 熱輸送 / 熱緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱緩和および熱輸送をともなう物理現象について、量子系や古典系をつかって幅広く研究を行った。量子系において、離散準位系がフォノン熱浴に接触している時に、系と熱浴との間に成長する強いエンタングルメントがどのように熱輸送に顔を出すかについて研究した。この研究は以前にもオーミック熱浴に対しては近藤状態の熱輸送としてレターの形で報告を行っている。今回は非オーミックな熱浴も含めた一般的な場合を研究した。斯波関係式を使うことにより、低温領域で漸近的に厳密な熱伝導度の表式を導出した。 熱輸送に誘起された電子輸送、つまり熱電効果の研究をカオティックキャイティーを介したメゾスコピック電子輸送系において研究した。すでに十分確立されている半古典理論による解析を行い、熱電能のゆらぎの分布を導出することに成功した。 また、古典系においては1次元熱輸送現象を研究した。フェルミ・パスタ・ウラム(FPU)モデルに代表される非線形格子系対して、熱伝導度が系の大きさとともに発散するいわゆる異常熱輸送現象に関して研究した。今年度は、平衡系で周期境界条件において、熱流ゆらぎの系のサイズ依存性を理論的に解明した。熱輸送の異常性に起因して、熱流ゆらぎも異常になることを示した。低次元輸送現象では界面成長モデルとして知られているカーダー・パリージ・ザン(KPZ)方程式のダイナミクスが関係していることが知られているが、我々の解析はその性質を使っている。また我々の結果は、数値的にも確認されている。 それ以外にも、電荷を帯びた熱輸送を考えたとき、磁場をかけた際に格子が熱流方向と直行方向にゆがむという現象も発見した。これは電子系で知られているネルンスト効果と同じ起源を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、熱輸送がともなう現象に関して、古典系のみならず量子系においてもさまざまな研究ができている。量子系に関しては、当初目的の範囲外でもあるので、その意味では予定よりも広範囲で研究ができていると言えるであろう。 古典系における異常熱輸送に関しては、熱流ゆらぎの研究が完了しており、当初目的としての課題としては、ゆらぐ流体力学方程式にあらわれる輸送係数のミクロな導出が残っていることになる。この課題に関しても論文には至っていないが、研究の進捗は良好である。 熱輸送に関連して、熱緩和現象も関連する重要な問題として挙げられる。その問題も一定の結果が出てきており、熱輸送がともなう物理現象の深い理解が得られつつあると言えるであろう。 これまで得られている一連の結果は、Physical Review Letters など著名な雑誌に掲載されており、一定の評価も得ていることも理由の一つとして挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方向性としては以下のようにする。まず古典系のゆらぐ流体力学の導出に関しては、現在すでに進んでいる研究をそのまま推進してできる限り論文に仕上げる方向で進める。それ以外にも、非線形格子系が長距離で相互作用する場合に関しても、これまでの解析がそのまま適用できることが判明したので、解析をする。コンピューターを購入して数値計算をすることで、これまでの理論的な解析を確かめながら多角的に研究する予定である。
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Research Products
(9 results)