2017 Fiscal Year Research-status Report
A new approach to construct planar equal-mass three-body choreographic solutions
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17K05588
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
尾崎 浩司 東海大学, 理学部, 教授 (00407991)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 3体問題 / 等質量3体8の字解 / 座標比関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々なタイプの重力下で平面上を運動する等質量3体について,8の字形の同一軌道を追いかけっこする「8の字解」の存在が知られている.その解は,等質量3体の重心が一定で全角運動量をゼロに保つ周期解である.等質量という強い条件を与えても3体の運動方程式は解析的には解けず,高精度8の字数値解のみが得られている.こうした状況を打破すべく,重心一定で全角運動量ゼロを保つ8の字解候補をつくる手立てを考案し,その候補の中から運動方程式を満たすものを探す,というアプローチを試みている. ベルヌーイのレムニスケート上で等質量3体が追いかけっこをする場合,各質点のy座標とx座標の比(以下,座標比関数と呼ぶ)は,母数の2乗が(2+√3)/4であるようなヤコビの楕円関数cn(t+j・4K/3); j=0,1,2で与えられる(ここでKは第1種完全楕円積分).ところが,この値以外の母数をもつcn(t)を座標比関数に選ぶと,等質量3体8の字運動の全角運動量は時間変動してしまう.そこで,当該年度は,任意の母数をもつcn(t)から任意の時刻で全角運動量をゼロに保つような座標比関数を具体的に作る道を探った. 研究成果は,任意の母数をもつcn(t)から作られて,任意の時刻で等質量3体の重心が一定で全角運動量をゼロに保つ座標比関数は, cn(t)+a・arctan[{cn(t)+cn(t+4K/3)+cn(t+8K/3)}/b](ここでa,bはKで決まる定数)である,ということを示したことである.この座標比関数の下で母数を連続的に変えると,軌道が少しずつ変化する8の字解候補(重心一定,全角運動量ゼロを満たすもの)が得られる.ベルヌーイのレムニスケート以外の8の字軌道で,重心一定で全角運動量をゼロに保つ8の字解候補を構成するこの手法は,他の数値周期解の解析的研究に役立つかもしれない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
任意の母数をもつヤコビの楕円関数cn(t)から,重心一定,全角運動量をゼロに保つ8の字解候補を構成できるようにはなった.しかし,8の字数値解に一致するような解は,8の字解候補の中に見いだせなかった.もちろん,やみくもにcn(t)から解候補を構成するに至ったわけではなく,以下に記述するベルヌーイのレムニスケート上の等質量3体8の字運動をヒントにした. 等質量3体がベルヌーイのレムニスケート上を追いかけっこする場合,任意の時刻tにおける等質量3体の平面座標(x_j(t),y_j(t));j=0,1,2は,ヤコビの楕円関数で書ける.3体の座標比関数はcn(t+j・4K/3)で表され,等質量3体は互いに2次元重力と斥力の和を受けて追いかけっこをする.このことは,2003年に藤原,福田,尾崎によって既に示されている.この解の背景に,2次元重力があるということは,2次元重力下の等質量3体8の字解の座標比関数は,母数の2乗が(2+√3)/4以外の値を持つcn(t)であるということを強く示唆しているように思える.その推定に基づき,解候補を構成するに至った.解候補初期配置が高精度初期値と一致するように母数を決め,2次元重力下の等質量3体8の字高精度数値解に8桁以上の精度で一致するものを探索した.結果は,高精度数値解に一致する8の字解は解候補に見いだせなかった,ということである.実際,有効数字3桁目以降に不一致が見られ,近似解を得たに留まった. 重心一定で,全角運動量ゼロという必要条件を満たすように解候補を構成する手立ては確立したものの,重力のみの運動方程式を満たすものは見つからず,本研究課題の1年目に目指したレベルにまで届かなかった.以上から,進捗状況は「やや遅れている」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
ヤコビの楕円関数cn(t)と同じ周期をもち,値域が±1の範囲を持つヤコビの楕円関数として,sn(t+K)が知られている.座標比関数をsn(t+K+j・4K/3);j=0,1,2に選ぶと,そのままでは等質量3体の全角運動量は変動してしまう.上の例と同じように,任意の時刻で等質量3体の重心が一定で,全角運動量をゼロに保つような道を探り,sn(t+K)から2次元重力下の等質量3体8の字解候補が構成できるかどうかを検討したい. 「現在までの進捗状況」に述べた座標比関数cn(t)+a・arctan[{cn(t)+cn(t+4K/3)+cn(t+8K/3)}/b]から作られる解候補は,ひょっとすると,距離の3乗に反比例する強力重力下の等質量3体8の字解を含んでいるかもしれない.強力重力下の等質量3体8の字運動では,他のタイプの重力下の運動とは異なり,任意の時刻で慣性モーメントは保存される特徴がある.この性質は,慣性モーメントの定義式と強力重力下の等質量3体の運動方程式から保証される.ある特定の母数を持つ座標比関数から作った解候補に,慣性モーメントを一定に保つものが含まれているかどうかを詳しく調べたい.もちろん,そうした特別な母数を見つけることができたとしても,母数の厳密値が得られる可能性は極めて低く,有効数字10桁程度で求まるに留まると予想される.したがって,強力重力下の等質量3体8の字解の高精度数値解が,どうしても必要になる.高精度数値解は,できれば15桁の有効数字で得たい.有効数字がこの桁にまで届くようにするためには,少なくとも20桁程度の高精度初期値を得る手立てを検討しなければならない.これに関しては,等質量3体問題に詳しい北里大学の藤原俊朗氏に相談にのってもらう予定である.
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Causes of Carryover |
天体力学N体力学研究会(2018)が関西方面で開催されることを想定し,新幹線交通費ならびに宿泊費を確保していた.ところが,会場が近場の国立天文台に決定し,交通費が思った以上に少額に収まった上,近距離出張のため宿泊費も出せないとの東海大学からの通達で,2017年度に33,584円の残金が発生した.翌年度分として請求した助成金と合わせて,2018年度の科研費は,主に,2018年7月に開催されるアメリカ数理科学会国際会議ならびに9月にバルセロナで開催されるハミルトン系シンポジウムへの参加費・渡航旅費にあてる計画である.
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