2019 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamics and Thermodynamic of Inherent Structure of Glass
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17K05589
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
青木 圭子 早稲田大学, 理工学術院, 客員上級研究員 (90252163)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ガラスの固有構造 / 分子動力学 / 弾性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガラスの研究は、緩和過程としての非平衡ダイナミックスを理解すれば良いだけではなく、その背景にある熱力学まで含めて理解しなければ本質はつかめない。一般的に、ガラスが緩和する最終的な構造は、固有構造(inherent structure)と呼ばれるが、熱力学的にはエントロピーの高い準安定状態における構造と考えられる。それは、局所的な自由エネルギーの谷間におけるエネルギーゆらぎの中で安定に存在できる構造である。ガラスは,液体を急冷することにより作られるが,通常は,熱履歴により緩和時間が引き延ばされ固有構造に至る事はできない.コンピュータシミュレーションによる従来のガラスの研究は,実験を模擬して熱履歴によりガラス状態を作ろうとしてきた.しかし,この方法だと様々な困難に直面する.本研究は,従来の方法とは異なり,温度と圧力一定の下で熱平衡状態のみならず,準安定状態を得ることが出来る方法を用いてガラスの固有構造を研究した.これは,ガラスの生成過程を時間的に追った場合の終着点から研究をしようとするものである.近年, 無機ガラスから生体系に至るまで, 様々な実験で平均自乗変位がガラス転移温度付近で急激に増加する現象が報告されている. 筆者は、分子動力学法のシミュレーションで得られる単成分球形粒子系の固有構造で, 同じように単位時間あたりの平均自乗変位である拡散係数が, ある温度で急激に立ち上がる現象を再現している. さらに, それらの固有構造のポアソン比,ヤング率, 体積弾性率などの弾性を測定して, 拡散係数が急激に立ち上がる温度よりかなり高い温度まで弾性的性質はそのままであることを見いだした. この事実は,ガラスの固有構造の運動論的な性質と硬いという性質には直接的な相関はなく, むしろガラス転移温度以上で動的不均一によって, 拡散と硬いという性質が同時に維持できている事を示している.
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Research Products
(4 results)