2018 Fiscal Year Research-status Report
Angular dependence of ionization probabilities on the angle between molecular axis and laser polarization direction
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17K05593
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 宗良 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20373350)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イオン化確率の角度依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
O2分子のイオン化確率の角度依存性の測定結果の解析を行った。具体的に、高強度レーザー光(100 fs, 800 nm, ~10TW/cm2)を超音速分子線としたO2と相互作用させ、生成したイオンを飛行時間型質量分析器によって検出をした。高強度光はマイケルソン干渉計へ導入し、分子配列をさせるポンプ光とイオン化させるプローブ光に分け、二つのパルスに遅延時間をつけてO2へ照射した。生成したO_2^+, O_2^2+のイオン収量を遅延時間の関数として得られ、そのデータからイオン化確率の角度依存性の情報を抽出した。 得られたイオン終了の遅延時間依存性は、分子軸分布とイオン化確率の角度依存性の両方の情報が含まれているが、分子軸分布は時間依存のシュレディンガー方程式を数値的に解くことによって得ることができた。未知量であるイオン化確率の角度依存性については、ルジャンドル関数により展開し、その展開係数を実験結果に合うように最適化することで決定した。 この結果、イオン化確率の角度依存性は、O_2分子のHOMO(πg軌道)の形状を反映したものであることが明らかとなった。 また得られた遅延時間に対するO_2^+, O_2^2+の収量の依存性をフーリエ変換したところ、N_2分子では観測されない回転量子数Nが4変化するような周波数領域のスペクトルが得られた。これも、HOMO(πg軌道)からのイオン化が起きていることから実験結果を説明をすることができた。すなわち、イオン化確率の角度依存性が、次数が4の球面調和関数の成分を含んでいることを意味しており、πg軌道からのイオン化の寄与があることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
O2分子のデータの解析を進め、周波数領域のスペクトルが回転量子数が4変化する信号を見つけた。このことと、時間依存のシュレディンガー方程式のシミュレーションの比較から、イオン化確率の角度依存性がHOMO軌道の形状を反映していることを明らかにできた。 また、この解析を通して、ポンプ光によって回転波束を生成し,遅延時間ののちにイオン化させるためのプローブ光を照射し,遅延時間に対する親イオンの収量が,分子軸分布,イオン化確率の角度依存性を反映していることを明らかにした。回転波束を決定する従来の実験の多くは,親イオンの観測ではなく,クーロン爆発後のフラグメントイオンの観測を行っていたが,今回は親イオンを観測することによって,イオン化確率の角度依存性の一般的な解析方法を確立出来た。 イオン化確率の角度依存性を決定するための一般的な方法を開発できたため,今後は、確立した手法に基づいて、様々な分子、特に計画をしていたCO_2分子について同様にイオン化確率の角度依存性を求めてゆく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究を通して、下記の方法によってイオン化確率の角度依存性を抽出できることが分かった。 分子配列をするポンプ光、遅延時間の後にイオン化のためのプローブ光を照射することによって、生成した親イオンの収量を、遅延時間に対する依存性を測定する。この信号を再現するようにイオン化確率の角度依存性を決定する。この際に、イオン化確率の角度依存性はルジャンドル多項式によって展開され、その展開係数を未知変数として実験結果を再現するように最適化する。ルジャンドル多項式は適度なところで打切る(4次程度)。 親イオンの収量は,分子軸分布とイオン化確率によって支配されるため,イオン化確率は上記のように展開し,一方,分子軸分布は時間依存のシュレディンガー方程式を数値的に解くことのよって正確に知ることができる。 この方法が機能することが明らかとなったので、今後はこの方法を様々な分子へ適用し、高強度光によるイオン化過程について調べてゆく。 特に,理論計算と実験が合致していなかったCO_2分子の実験を行うとともに,NOやNO2といった奇数個の電子を持つ分子のイオン化確率の角度分布を調べてゆく。
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Causes of Carryover |
今年度は,データ解析に重点を置き,研究目標である高強度光によるイオン化確率の角度依存性の新しい評価方法の確立を行った。新規のプログラム作成を含み,予定以上に解析に時間がかかり,充分な実験を行えなかったため,予算の執行が少なかった。一方,解析に大きな進展があり,高強度光によるイオン化確率の角度依存性の新しい評価方法の一般的な方法を確立することができた。このため,最終年度である次年度に,集中的に様々な分子のデータ測定を行い,本年度の解析方法を元に,高強度光によるイオン化確率の角度依存性を系統的に解析することを行う。昨年度の計画で未消化であった予算は,今年度の実験におけるサンプルガスや消耗品の光学部品の購入が予定されている。
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