2017 Fiscal Year Research-status Report
Quasi-liquid layer on ice surfaces in the global environment: In-situ observation by controlling atmospheric gas and water vapor pressure
Project/Area Number |
17K05604
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長嶋 剣 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60436079)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 氷結晶 / 疑似液体層 / 高分解能光学顕微法 / 雲 / 大気化学 / 塩化水素 / 二酸化炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々なガス環境における氷表面の疑似液体層をレーザー共焦点微分干渉顕微鏡観察するという目的のため、平成29年度(期間3年の1年目)は特に次の3点に絞って研究を進めた。 (1) 観察用チャンバーの改良による低温測定。申請書では低温に加え真空対応でチャンバーを開発する予定であったが、採択額減額(490万円→330万円)への対策として装置改良による低温測定のみを目指した。低温対応サーミスタへの交換、ペルチェ素子の発熱側の冷却効率改善などにより、これまでの観察可能最低温度を-15℃から-28℃まで下げることができた。 (2) HClガスの影響。大気中に塩化水素ガスが存在すると氷表面に塩酸液滴が生じることは報告済みであるが、新たに氷の高指数面では塩酸液滴の出現頻度が非常に高く、氷の成長に伴い塩酸液滴が次々と氷内部に取り込まれることがわかった。塩酸液滴の埋没により氷内にどの程度のHCl成分が含まれるかを計算したところ、HClガスの氷結晶への溶解度より10倍高い値であることがわかった。研究成果は国際誌に論文投稿中である。 (3) CO2ガスの影響。HClガスの影響について進展があったため、同じ酸性ガスとして100%CO2ガスの影響を調べた。すると、氷のステップ成長速度が遅くなる様子が見られた他、HClガスとは異なりCO2ガスでは氷表面に液滴が生じないことがわかった。ただし、0℃以上にして氷表面だけを溶かすと即座にCO2ガスが溶け込んで炭酸液滴となり、その炭酸液滴は-20℃の低温にしても凍らずに氷表面に残りつづけることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で言うと、1年目の研究計画のうち変更項目1点、行っていない項目1点、2年目以降に行う項目を前倒しで行ったのが2点であったため、トータルとしてはおおむね順調に進展していると言える。 (1) 「低温真空対応チャンバーの開発」の予定から、真空対応にすることを断念し低温対応のみに特化した。理由は前項で述べた通り予算との兼ね合いである。 (2) 「大気主成分ガス(N2, O2)の影響」の予定からO2の調査を2年目以降へと後回しにした。理由は可溶性微量成分ガスの影響による新しい現象が発見されたため、(3), (4)を前倒しで行ったからである。 (3) 「可溶性微量成分ガス(HClガス)の影響」は2年目に行う予定であったが、過飽和条件で塩酸液滴が氷に埋め込まれるというこれまで想定していなかった現象が確認できたため、追試を行った。 (4) 「可溶性微量成分ガス(CO2ガス)の影響」は同じく2年目に行う予定であったが、HClガスとの比較のため前倒しで行った。HClガスとの違いとして氷表面での液滴核形成が確認できておらず、2年目以降も追試する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
特に研究計画とは異なる方針としては以下の通りである。 (1) 真空対応チャンバーの作製は予算の状況と実験結果を見て再考するが、基本的には新たに発見された酸性ガスが氷表面に作る液滴の観察と、その液滴が氷内部に埋め込まれる条件を調べることを優先する。 (2) CO2ガスの影響。100%CO2ガス環境下で氷表面に炭酸液滴らしきものが確認できているので、その追試を行う。また、地球環境濃度である400ppmCO2ガスでも同様の事が確認できるのか、できないのかを調べる。 (3) 1年目に行う予定だったO2ガスの影響を調べる。
|
Causes of Carryover |
低温に加え真空対応の観察用チャンバーを開発する予定であったが、採択額減額への対策として1年目は装置改良による低温測定のみを目指した。そのため次年度使用額が生じた。観察チャンバーの開発に踏み込むかどうかは2年目以降の研究結果などを見て決定する。
|
Research Products
(7 results)