2017 Fiscal Year Research-status Report
Biomembrane shape regulation by proteins
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17K05607
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 博司 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00514564)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生物物理 / ソフトマター / 生体膜 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、BARスーパーファミリータンパク質をはじめ、局所的に曲げるタンパク質が見つかっている。しかし、その膜形状の制御機構は不明な点が多い。本研究では多数の膜タンパク質分子の協同的な振る舞いに注目して、膜の形状がどのように制御されているかを、主に数値シミュレーションを用いて探求する。 2017年度は、バナナ状の形状を持ち、一方向に膜を曲げるBARタンパク質のようなタンパク質に加えて、同じ符号の等方的な自発曲率を持つ添加物(膜貫入ペプチドや円錐状脂質など)がある場合の脂質膜の構造変化について調べた。 バナナ状タンパク質によって、チューブ状の膜が形成されることがこれまでの研究でわかっていたが、同じ符号の等方的な添加物を加えた場合、チューブ形成が促進されることを明らかにした。また、逆の曲率を持つ場合、ネットワーク構造の形成によるチューブ形成の抑制や球状のコブ形成が行われることがわかった。正と負の自発曲率を持つ2種類の添加物を等量加えた場合、最初は無添加の時と同様の振る舞いを示すが、その後、正の曲率を持つ添加物が膜の突起部に濃縮されることにより、チューブ形成が促進されることを明らかにした。このように膜形状に依存して、分子濃度が変化し、膜形状変化のダイナミクスが大きく変わる。生体膜は多くの脂質分子、膜タンパク質から成るが、細胞の種類、部位に依存して、多様な分子分布を持つ。我々の研究結果はこれらの多様な分子分布が生体膜の膜変形にとっても重要であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおり、 バナナ状タンパク質による生体膜のチューブ形成が、同じ符号の等方的な自発曲率を持つタンパク質など添加物によって、促進されることを明らかにした。また、タンパク質吸着による膜の剥離やバナナ状タンパク質のキラリティの効果についても予備計算を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度はタンパク質吸着による膜の剥離やバナナ状タンパク質のキラリティの効果について研究する。また、細胞骨格によって生体膜に力が加わった時の形態変化についても研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定より学会等の参加が少なかったため、旅費の利用が少なくなった。また、研究室の計算機の更新を次年度に行うため、次年度に多くの予算を繰り越した。
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