2017 Fiscal Year Research-status Report
DNA conformational behavior and functions in microcapsules
Project/Area Number |
17K05611
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
ジンチェンコ アナトーリ 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (00432352)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DNA / 人工細胞モデル / 高分子カプセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、DNAをカプセル化することで新型人工細胞モデルの構築ならびに人工細胞モデルにおける単一分子DNA挙動の解明を目指している。本年度は、DNAの多層薄膜でカプセル化法を開発していた。Na2CO3とCaCl2の溶液を混合させるときに、長鎖DNA溶液を加えることで、Na2CO3とCaCl2の反応で形成される~10um CaCO3ビーズ内にDNAをトラップすることができた。次に、CaCO3ビーズの表面に高分子の多層薄膜を析出させ、EDTAでCaCO3の芯を除去することで、DNAを封入した高分子の多層薄膜中空カプセルを作製した。DNAおよびカプセルを構成する高分子を蛍光色素で標識して、DNA@カプセル系の構築の各段階について、CaCO3ビーズおよび高分子カプセルにおける単分子DNAの存在を蛍光顕微鏡で観察できた。 以上の方法で人工細胞モデルの構築が可能と示したが、カプセル内でブラウン運動をするDNA分子の割合が非常に少なく、ほとんどのDNA分子がカプセルの膜に固定されていた。これから、DNA分子の高次構造変化を解析するため、カプセル内でブラウン運動をするDNA分子の割合を上げる必要があり、カプセルの作製方法の改善は今後の課題である。単分子DNAのカプセル化の実験に加えて、70 nm~500 nmシリカナノ粒子のカプセル化実験を行った。DNAと同様の方法を用いて、ナノ粒子のカプセル化へ成功した。カプセル化後、カプセル内でブラウン運動をするシリカ粒子と膜に固定したシリカ粒子が共存して、ナノ粒子のサイズ減少および塩濃度の上昇によって膜に固定したシリカ粒子の割合が高くなることを示した。 それ以外に、今後の研究の準備として長鎖DNA・ヒストンタンパクの複合体(クロマチン)を再構成して、単一分子観察により、2価と4価カチオンによるクロマチンの高次構造変化を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりに、DNAを高分子カプセルに閉じ込めることに成功し、人工細胞モデルの構築の各段階におけるDNA分子のトラップ率、DNA分子の高次構造、カプセル内の分布など多面的評価できた。更に、当初の計画にあった高分子DNAに限らず、微粒子のカプセル化もできることを示した。現時点の人工細胞モデルでは、カプセル内のDNA分子がほとんどカプセルの膜に吸着した状態にあるため、DNA高次構造変化のダイナミックスは検討できない難点があり、次年度に解決する必要がある。この問題を除いて、単一DNA分子のカプセル化方法を開発できたため、本研究は当初の計画と比べておおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおりに、これまで開発してきた人工細胞モデルを利用して、カプセル内における(a)カチオン性のバインダーにより単一分子DNAの折り畳み(凝縮)(b)高分子混雑効果によりDNA分子の高次構造変化を研究する。得られた結果を水溶液中におけるDNA高次構造変と比較して、DNA高次構造に対する閉じ込め効果の影響を明らかにする。また、これまでの研究から残った課題として、カプセル内にブラウン運動するDNA分子の割合を上げるために、カプセル化方法の最適化を行う。具体的に、(i)DNA濃度変化によるDNAのトラップ率とブラウン運動するDNAの割合の変化(ii)膜を構成する高分子の種類(構造、電荷、疎水性など)によるDNAのトラップ率およびブラウン運動するDNAの割合の変化を調べる。以上の手法により、ブラウン運動するDNA分子の数が変わらない場合、油中水滴など他のDNAカプセル化方法を利用して、長鎖DNAがカプセル内でブラウン運動を示す系の構築も試みる。
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