2017 Fiscal Year Research-status Report
Dynamics of self-organization induced by Marangoni instability
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17K05616
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
矢野 陽子 (藤原陽子) 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70255264)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マランゴニ対流 / 表面張力 / リン脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】マランゴニ対流は,表面張力が場所によって異なる場合に自発的に生じる対流のことである。水表面の温度分布や界面活性剤の濃度分布によって対流は発生する。近年,界面活性剤の液滴を水中に保持すると,表面張力が振動することが報告されている。数値解析によって,表面張力の振動は,対流の発生(最大流速3 mm/s)と消滅が繰り返されることによって生じること,さらには,対流が消滅するのは水表面に単分子膜が形成される時であることがわかった。他方,あらかじめ水表面にリン脂質の単分子膜を形成させておき,界面活性剤の液滴を水中に保持した場合には,表面張力の自発振動の周期および振幅が,リン脂質単分子膜の被覆率に大きく依存することを見出した。これらのことより,マランゴニ対流は,両親媒性分子が自己集合するための駆動力となっていると考えられる。よって,マランゴニ対流生成消滅にともなう膜形成ダイナミクスを分子レベルで捉えることが出来れば,自己組織化膜の形成機構に関する知見を得ることが出来ると思われる。本研究では,マランゴニ対流によって,界面に生成消滅する自己組織化膜の形成過程を,表面張力および時分割X線反射率測定によって観測する。 【成果】水面にリン脂質(DSPC)を展開し、界面活性剤(heptanol, octanol)の液滴を水中に保持することによるマランゴニ対流の発生について研究した。本年度は、特に(1)表面張力の自発振動周期および振幅のリン脂質の表面圧依存性、(2)表面張力の自発振動周期および振幅の界面活性剤依存性、(3)マランゴニ対流の流速、(4)マランゴニ対流発生中のX線反射率測定について研究を行った。その結果、表面張力の自発振動の振幅はマランゴニ対流の流速に大きく依存し、周期は界面活性剤の溶解度に依存することがわかった。一方、マランゴニ対流発生中のX線反射率測定にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は、KEKのビームタイム中にマランゴニ対流を発生させること自体が難しかったが、マランゴニ対流の発生条件について詳細に検討した結果、明確な実験条件を決定することができた。その結果、世界で初めてマランゴニ対流発生中の水表面のX線反射率測定を試み、1秒で時分割測定可能であることを確認した。しかしながら、長時間の連続測定ではradiation damageが問題となることもわかった。よって、今後はX線の照射位置を変えながらの測定を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
KEKにおけるX線反射率測定:本年5月末に実施。また下半期にも1回以上実施を試みる。ここでは、radiation damageを避けるためにX線の照射位置を変えながらの測定と、さらに短い時間分解測定を試みる。 研究室における表面張力測定:リン脂質、界面活性剤の種類を変えて、マランゴニ対流発生による表面張力の自発振動を観測する。今年度は特に、表面張力の緩和時間が何に依存するのかを解明する。そのために表面張力と流速を同時に測定するようなシステムを構築し、表面張力と流速の関係について検討する。
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Causes of Carryover |
残金は12,313円である。基金になる前は、残金を0にするために、多めの支出をして差額を自己負担していた。一方、今回は繰越が可能になったため、多めの支出は避け、最小限の繰越金額になるようにした。
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Research Products
(2 results)