2018 Fiscal Year Research-status Report
Dynamics of self-organization induced by Marangoni instability
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17K05616
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
矢野 陽子 (藤原陽子) 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70255264)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | X線反射率法 / 表面張力 / マランゴニ対流 / 水面上単分子膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
マランゴニ対流は,表面張力が場所によって異なる場合に自発的に生じる対流のことである。例えば,樟脳船は,船首と船尾の界面活性物質(樟脳)の濃度差によって生じた表面張力勾配が推進力となり進む。生体膜を構成するリン脂質もまた界面活性物質である。一般に界面で自己組織化膜が形成されるとき,しばしばマランゴニ対流を伴う。本研究では,マランゴニ対流によって,界面に生成消滅する自己組織化膜の形成過程を,表面張力および時分割X線反射率測定によって観測する。界面の電子密度分布の時間変化から,両親媒性分子の自己組織化機構を分子レベルで理解することを目指す。 【平成30年度】<計画>自己組織化膜形成過程の時分割DXR測定と構造解析:X線反射率測定は,高エネルギー加速器研究機構(KEK)のPF-ARビームラインとSPring-8のBL13XUビームラインにDXR装置を設置して行う。実験は,表面張力を同時に測定して,表面張力の振動周期に応じた繰り返し測定を行う。 <実施>マランゴニ対流発生中のX線反射率測定について、データのS/N向上のために、以下の2つの試みを行った。(1)表面張力の自発振動周期を考えて、データを繰り返し積算する。(2)周期の大きい系を選んで、データ積算時間を長くとる。その結果として、(2)だと変化途中のデータを積算することになり、(1)の方が良いという結論に達した。 表面張力の自発振動については、様々なリン脂質についての測定を比較し、自発振動の周期と振幅が何で決まるのかを追求した。 結果をまとめて投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題(1) 液体内部からのバックグラウンド散乱を減らしてS/Nの改善を図る(2) 入射ビームの強度を上げて,測定時間の短縮を図る課題(3) 広い散乱ベクトルqz領域を測定できるようにする。→解決済み 課題(4) 様々な界面活性剤について,マランゴニ対流の発生条件を探索する。→実施中 課題(5) 得られた反射率曲線のプロファイルフィッティングを試み,水面に形成された膜の密度分布を得る。→残念ながらプロファイルフィッティングできるほどS/Nの高いデータは得られないので、特徴的な構造を抽出して時間変化を追う。 なお、放射光施設の実験時間は限られているため、実験室のX線反射率計を立ち上げた。今後は、これを用いて予備測定を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
【令和元年度】生命現象への応用:「両親媒性分子の種類」「pH」「添加剤」を変えて,自己組織化膜の形成過程の構造解析を行う。また,界面にリン脂質の単分子膜を形成させ,コレステロール等の生体分子を吸着させると,膜の形成過程にどのような影響があるのかを調べる。生体膜は,コレステロールや膜タンパク質等の存在により流動性が著しく変化することが知られている。第三物質の存在下で,自己組織化膜の生成消滅振動の周期や構造を観測することにより,生体膜と生体分子の相互作用を知ることが出来る。また現在、わからない以下の問題を解決する。(1)表面張力の自発振動の振幅Pは何で決まるのか?(2)表面張力減少後の回復時定数tは何によって決まるのか?(3)A/tが一定なのはなぜなのか?(4)初期表面圧とA,tの関係
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Causes of Carryover |
論文執筆が間に合わず、英文校正料等に支出できなかった。
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Research Products
(2 results)