2017 Fiscal Year Research-status Report
微細不均質性を考慮したリソスフェア-アセノスフェアの高精度イメージングの研究
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17K05623
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉澤 和範 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70344463)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地球内部構造 / リソスフェア / アセノスフェア / 異方性 / 不均質性 / 上部マントル / 表面波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,上部マントル内部のランダムな微細不均質性が作り出すみかけの異方性が,中~長周期表面波の伝播に与える影響を考慮しつつ,高精度なリソスフェア-アセノスフェアの地震学的構造を推定することを目的としている.本年度はまず,リソスフェア・アセノスフェアの各層内に様々な形状・強さのラミナ状不均質性を含む媒質での2次元波動場シミュレーションを行い,合成された中~長周期のレイリー波及びラブ波の位相速度の変化を調べた.その結果,特にレイリー波では,水平方向に間延びしたラミナ状不均質性により位相速度の低下が起こる一方,ラブ波ではそのような影響はほぼみられず,結果として,SH>SVとなる見かけの鉛直異方性が生じることが確認された.この結果は理論的な予測とも調和的である.この結果の一部は,国際学会にて発表を行った.一方,研究の基盤となる3次元速度モデルの高精度化に向け,ベイズ統計に基づく新しい非線形インバージョン手法の開発も行った.特に,Moho面やリソスフェア内不連続面(Mid-lithsphere Discontinuity: MLD),リソスフェア-アセノスフェア境界(Lithosphere-Asthenosphere Boundary: LAB)といった内部境界面の深さや速度変化の高精度推定に向けて,実体波の変換波(P-to-S, S-to-P)およびマルチモード表面波の位相速度を同時に用いた構造推定手法の開発を進めた.さらに,表面波による3次元上部マントルS波速度構造モデル復元の高度化に向けて,独自の高次モードのアレイ解析法や,振幅情報を用いた表面波トモグラフィー法の北米大陸地域への応用等も行った.また,豪州大陸地域のマルチスケール不均質性とMLDやLABといった内部境界層との関係に関わる最近の研究成果のレビュー論文も国際誌に発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通り,地震波動場の数値シミュレーションによる検証や,3次元速度構造モデルの高精度化に向けた新しい手法開発等の基礎研究が着々と進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
新たに開発を行った複数の地震波解析データ(実体波の変換波および表面波のマルチモード位相速度)を同時に用いた非線形インバージョン法を活用し,主に大陸域の3次元構造モデルの高精度化を進める.さらに,波動場シミュレーションから推定された微細不均質性の強度や形状などの情報を加味して,みかけの鉛直異方性の影響も考慮した新しい3次元S波速度モデル推定に向けた研究を推し進める.
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Causes of Carryover |
当初,本年度に購入を予定していた計算サーバを,予算の都合上,次年度予算と合わせて購入することにしたため,残額が発生した.次年度に計画している計算機の購入と国際学会の参加旅費等に充てる計画である.
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Research Products
(12 results)