2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K05628
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
渡邊 了 富山大学, 大学院理工学研究部(都市デザイン学), 教授 (30262497)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 浸透率 / 電気伝導度 / 地震波速度 / 岩石 / 地殻 / 流体 / 輸送特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,上部・中部地殻の地震波速度・電気伝導度構造から地殻内の「浸透率」の分布を推定し,「地殻流体」に関する理解を,「流体分布」という静的イメージから「流体移動」という動的イメージに変えることである。この目的を実現するために,含水岩石の弾性波速度・電気伝導度・浸透率同時測定に基づき,地震波速度および電気伝導度から浸透率を推定する方法を開発することを目指している。 平成29年度は,含水岩石の弾性波速度・電気伝導度・浸透率を同時に測定する実験システムを構築した。実験システムは,封圧制御システム,間隙流体圧制御システムと物性測定システムから構成される。封圧制御システムは,圧力容器および油圧ポンプからなる(圧力媒体:シリコンオイル,最高圧力:200MPa)。間隙流体制御システムは,岩石試料のエンドピースに組み込んだ油圧―水圧変換機構(Watanabe and Higuchi, 2014)と圧力容器外部の油圧ポンプからなる。油圧ポンプで発生した圧力は,油圧―水圧変換機構を用いて,間隙流体(電解質水溶液)に伝えられる。間隙流体と圧力容器金属部分は,油圧―水圧変換機構とテフロン系部品を用いて電気的に絶縁した。間隙流体圧は岩石試料両端において独立に制御することができ,過渡パルス法による浸透率測定が可能である。封圧,岩石試料両端の間隙流体圧は一定時間間隔でモニターされる。圧力容器からは物性測定用のリードを16本取り出すことができ,様々な物性の同時測定が可能である。物性測定系は,弾性波速度測定用のファンクション・ジェネレータとオシロスコープ,電気伝導度測定用のLCRメータおよび計測制御用のコンピュータからなる。高圧下での弾性波速度と電気伝導度の同時測定まではテストを終えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,平成29年度中に実験システムを構築し,浸透率測定システムのテスト,砂岩試料を用いた弾性波速度・電気伝導度・浸透率の同時測定まで行う予定であったが,実際には浸透率測定システムの構築まで進んだところである。遅れの原因は二つある。一つ目は,平成29年9月に納入された圧力容器の不具合である。容器上蓋ネジ部に不具合があり,再加工を施したため,実際に圧力容器が使用できるようになったのは12月になってからであった。二つ目は,浸透率測定用の圧力センサーの納期の遅れである。平成29年度中の浸透率測定システムの稼働を目指して,前倒し支払いを請求して12月に圧力センサーを発注したが,納入までに2か月かかったため,平成29年度末にようやく浸透率測定システムが完成したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に構築した実験システムのテストを行ったのち,花崗岩を試料として含水岩石の弾性波速度,電気伝導度,浸透率同時測定を行い,弾性波速度,電気伝導度から浸透率を推定する方法の開発を目指す。 (1)浸透率測定システムのテスト 毛細管を用いて浸透率の「標準試料」を作製し,浸透率測定システムの性能評価を行うとともに,浸透率の大きさに応じて,どのような圧力差を与えるべきかを検討する。 (2)砂岩試料を用いたテスト 浸透率が高い砂岩を試料として,含水状態での弾性波速度,電気伝導度,浸透率の同時測定システムのテストを行う。常圧からはじめて最高圧力200MPaまで段階的に封圧を増加させ,弾性波速度,電気伝導度,浸透率がどのように変化するかを調べる。封圧増加に伴う固相連結の増加に伴い,弾性波速度の増加が予想される。一方,電気伝導度と浸透率は液相連結を反映する物性であるので,封圧増加に伴い低下することが予想される。浸透率は電気伝導度に比べて,液相連結部の開口により強く依存する物性であるので,封圧増加に伴ってより大きな低下が予想される。浸透率が高い岩石を使用する理由は,測定時間短縮のためである。この結果を基にして,新しい実験装置についての論文を学術誌Geofluidsに投稿する。 (3)含水花崗岩の弾性波速度・電気伝導度・浸透率の同時測定 常圧からはじめて最高圧力200MPaまで段階的に封圧を増加させ,弾性波速度,電気伝導度,浸透率がどのように変化するかを調べる。弾性波速度からクラック密度を求め,電気伝導度,浸透率との関係を調べるとともに,観測される地震波速度,電気伝導度から浸透率を推定する方法を検討する。成果をAGU Fall Meetingや日本地球惑星科学連合の年会で発表するとともに,論文にまとめ,学術誌Journal of Geophysical Researchに投稿する。
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Research Products
(1 results)