2017 Fiscal Year Research-status Report
Spatial variation of S-wave reflection efficiency on plate boundary associated with long-term slow slip events
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17K05637
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
北 佐枝子 広島大学, 理学研究科, 助教 (10543449)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スロー地震 / b値 / 西南日本 / 紀伊半島 / スラブ内地震 / マントルウエッジ / 減衰構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,本課題の研究を効率的に実施できるようにするための準備を行った.すなわち,反射波を出す地震やプレート境界上での反射点となりうる場所の特定に役立つように,西南日本のうち紀伊半島の地震活動の特徴を詳細に調べた.連携研究者の京都大学防災研究所の澁谷教授のによる不連続面の情報に基づき紀伊半島の震源分布を分類し,それぞれの特徴やb値について調べた.また,Qp構造についても調べ,それとの比較検討も同時に行った. この地域のb値は、スラブ内地震(0.82),内陸地殻内地震(1.01),マントルウエッジ内地震(1.06)の順に値が大きくなっていた.さらにスラブ内地震について海洋性地殻と海洋性マントルに区分すると、海洋性地殻のb値(1.01)は,海洋性マントルのb値(0.74)と比べ大きいことがわかった. b値の空間変化については,三重県の尾鷲市と大阪府の堺市を結ぶ線を境に、各々の地震活動のb値が大きく変化することを見つけた.なおこの境界線は,過去の大規模スラブ内地震の震源が2つ分布し,Miyoshi and Ishibashi (2004; 2005)の”スラブの断裂”の場所,熊野酸性岩の北端や深部低周波微動のセグメント境界にも対応していた.海洋性地殻内地震と海洋性マントル内地震のb値を比べると,境界線の東側地域(0.92,および 0.66)は西側地域(1.06および0.76)よりもそれぞれ小さくなることがわかった.その一方でマントルウエッジ内の地震では,上記の境界線の東側地域のb値(1.28)は西側地域(0.99)に比べ大きい値を示していることがわかった. これらの結果を総合すると,今年度の結果により,紀伊半島下の海洋性マントルは,上記の境界線より南西部の方が北東部より含水化が大きい一方,マントルウエッジ領域では,西側の方が東側よりも含水化が小さいことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
紀伊半島では地震のb値の研究を行ってみたところ,スロー地震のセグメンテーション境界に対応して値が急変することがわかった.このb値の空間変化は,減衰構造の空間変化とも非常に調和的なものとなっていた.これらの成果は,次年度以降の研究活動に非常に役立つ情報と言える. このような通常の地震のb値とスロー地震の発生様式との比較検討は,当初の計画では入れていなかった.しかし,研究協力者および指導学生である学部学生・広瀬勇樹氏の卒論研究で対応関係の兆候が見えていた.そのため,広瀬氏の結果を参考にしながら,紀伊半島の地震のb値をさらに詳細に調べたところ,本研究計画の効率的な実施に役立つ成果が得られた. また,本研究計画を応用した内容により,ハーバード大学のDelbridge博士との共同研究を行い,東北地方のM9地震の前後でスラブ内の地震活動および応力場に変化があったことを見出していたが,その成果が論文として発表することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
Ando et al. (2012)では,微動のセグメント境界が,プレート境界でのレオロジー特性の違いが生じる場所で形成されることを数値シミュレーション結果に基づき指摘している.この指摘を踏まえると,紀伊半島下でスラブ内地震およびマントルウエッジ内地震のb値が急変する場所は,プレート境界でも構成物質やレオロジーが急変していると考えられる,そして,本研究の結果も,四国下の減衰構造解析を行ったKita and Matsubara (2016)が指摘したように,上盤側プレートの不均質性がプレート境界上で発生する微動のセグメント境界形成と密接に関わることを支持している. Audet and Burgmann (2014)では,上盤側およびプレート境界でのシリカの含有量が,微動セグメントの周期性を決めることを,複数の沈み込み帯での観測結果をもとに指摘している. 本研究の申請書に記載した通り,西南日本では,過去のプレート境界と想定される断層における石英脈の形成が多数報告されている.本研究の今年度の成果により見出されたマントルウエッジとスラブ内におけるb値の空間変化は,紀伊半島の西部のプレート境界では東部よりも石英脈が発達しており,スラブからのマントルウエッジへの水の流入が東部よりも起きにくいことを意味すると考えられる. 以上のことを踏まえ,来年度はマントルウエッジおよび内陸地殻内地震によるプレート境界における反射波の検出する研究活動を実施し,反射効率の空間変化を調べる予定である.
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Causes of Carryover |
研究代表者が,次年度より所属研究機関を広島大学から建築研究所へ異動することになった.異動準備などに追われ研究打ち合わせの出張が当初よりむつかしくなったこと,仮に物品を購入した場合は物品の異動手続きが煩雑となるため,予算を次年度に使用することにした.
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Research Products
(7 results)