2018 Fiscal Year Research-status Report
Spatial variation of S-wave reflection efficiency on plate boundary associated with long-term slow slip events
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17K05637
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Research Institution | Building Research Institute |
Principal Investigator |
北 佐枝子 国立研究開発法人建築研究所, 国際地震工学センター, 主任研究員 (10543449)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スロー地震 / スラブ内地震 / 短期的スロースリップ / b値 / セグメント境界 / 紀伊半島 / 長期的スロースリップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究活動に関することでは,国内外の複数の学会(2019年地球惑星科学連合春季大会,AGU,AOGS,日本地震学会)でのポスターおよび口頭発表,国内学会(JpGU)での国際セッションの開催などがあった.その際には,複数の研究打ち合わせを共同研究者と行うことができた.なお,実施した研究活動による成果は投稿論文にまとめ,現在は論文原稿を共著者が最終確認している段階である.また,複数の国内開催の国際研究集会への参加も行い,研究打ち合わせなどもその際に複数行った. なお本研究課題と関連して必要となった約一週間の在外研究を7月に実施した.南カリフォルニア大学のHeidi Houston教授,John Vidale教授の元でスロー地震のセグメント境界に関する研究活動,スロー地震やスラブ内地震に関するアメリカにおける研究状況の最新結果の情報収集も行った. 今年度は科研費を使用した出張を通して,世界の最先端の潮流や知見を得ることができ,非常に有意義な年度であった.それらは来年度以後の研究活動に反映させる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「長期的スロースリップの断層面の中央部では石英の濃集の為に,反射強度が周辺域よりも大きく,同断層面の縁や周辺域での反射強度は小さい」という仮説の検証を, 地震学者と地質・岩石学者の連携研究者と共に西南日本にて実施している.長期的スロースリップの分布と,内陸地震の放出するS波のプレート境界における反射効率の空間変化 との関係との検証を行うことを目的として,前年度は反射波を出す地震やプレート境界上での反射点となりうる場所の特定に役立つように,西南日本のうち紀伊半島の地震活動の特徴を詳細に調べた.それにより,三重県の尾鷲市と大阪府の堺市を結ぶ線を境に,スラブ内地震および内陸地震のb値が大きく異なることをみつけ,スロー地震のセグメント境界にこの境が対応することも見つけた.今年度も,申請者は地震波のプレート境界での反射効率の推定場所の優先度を検討している.上記の反射効率の推定する場所の優先度を検討するため,南カリフォルニア大学の Houston教授と共に紀伊半島北東部部にてプレート境界の下のプレート内部地震の特徴を調べ,短期的スロースリップの発生時期との関連を検討したところ下記の結果が出てきた.短期的スロースリップの発生時期の前と後2ヶ月分の時期を比較す ると,(a)海洋性プレート内(スラブ内)では,地震発生数の上昇が減速し,(b)b 値(発生する地震の平均マグニチュードと関係する数値)も減少,(c)スラブ内 の応力場も変化することを見出した.これらの成果は,当初予期していなかった,スラブ内地震とスロー地震との発生時期に関連性をしめしている.
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように,本研究の研究活動により,紀伊半島だけではあるがスラブ内地震とスロー地震との発生時期に関連性が指摘された.これは非常に重要な成果であり,スラブ内地震のモニタリングにより,大地震の準備過程だと考えられているスロー地震をモニタリングできる可能性を示している.スラブ内地震とスロー地震との関係に,石英脈形成が関わる指摘が今年度発表の論文でもあり(Otsubo et al. 2018),ニュージーランドでも本研究とにた傾向が米国地球物理学連合の学会発表として報告があり,Nature Geoscienceでの発表論文も見受けられる.そのよう世界最先端でもスラブ内地震とスロー地震との関連に注目がいくようになってきた状況を鑑み,スラブな地震とスロー地震研究で実績をもつ南カリフォルニア大学のHeidi Houston教授やカリフォルニア大学バークレー校のBurgmann教授等との連携を深めるため,複数の海外の大学や研究機関での在外研究を実施する.さらに地質学者の氏家・筑波大学准教授などにも加わっていただき,地質学者とも石英脈の形成とスロースリップとの関連性について議論し,学際的な短期的・長期的スロースリップの発生環境モデルの高度化を目指す.
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属研究機関の異動(広島大学から建築研究所)があり,政策研究大学院大学の連携准教授の職も年度途中から兼ねることになり,状況が多少変化した.建築研究所は国土交通省所管の研究所であり,科研費の使用ルールの運用が文部科学省所管の大学や研究所とかなり異なるため,例えば1)在外研究や予算執行をするうえでは,研究者自らが決済手続きを行い,最低でも1ヶ月前に申請して事前伺いを必要があること,1)科研費支出ルールでは支出先として認められている学会参加の際の同行する子供の託児費用に関して,国土交通省所管の研究所すべてにおいて支出の前例が無いことを引き合いに,建築研究所における使用を当初認めてもらえず,それを認めてもらうため内閣府科学技術担当部門等と相談をおこない,最終的に支出環境構築をしたが,それらに非常に時間がかかったため,予算使用を文部科学省所管の大学や研究所と比べてスムーズに実行できなかったという事情が新たに生じた.また,研究が当初予期していなかった方向に研究成果があがり,その方向に研究を重点的に進めることにしたこと,世界の潮流が変わってきていることから,Heidi Houston博士等の複数の海外の有名研究室にて在外研究を行う必要が生じるなど,研究計画を一部変える必要が出てきた.それらと関連して,予算を次年度に使用せざる得ない状況に至った.
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Remarks |
日本地球惑星科学連合での国際セッション(セッション名:スラブ内地震)の開催は,国際会議の開催実績欄に記したが,該当しないと学振が判断した場合は,削除願いたい.
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Research Products
(12 results)