2017 Fiscal Year Research-status Report
Composition of the Earth's core estimated from the core formation process
Project/Area Number |
17K05638
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
市川 浩樹 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (50570503)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地球中心核の組成 / 軽元素 / 地震波観測 / 鉄合金液体 / 第一原理分子動力学計算 / マグマオーシャン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究期間前から行っているFe-(Si, S, C, H)系の第一原理分子動力学計算(核の温度・圧力領域(温度:4000ー8000K、圧力:100ー350 GPa))を行った。各軽元素のモル比が、0.1-0.3程度の範囲で、モル比 0.1ごとに組成を変えて、20 程度の異なる温度・体積条件で計算を実行した。その結果をもとに、組成の異なる各鉄液体混合物の状態方程式を作成した。同時に、自己拡散率の組成・圧力・温度依存性を明らかにした。 各鉄液体混合物の状態方程式と地震波観測値の比較により、外核全体の組成の推定を試みた結果、炭素が外核の主要な軽元素である可能性が低いことが明らかになった。しかしながら、他の軽元素のうち、どれが外核へ多く含まれるのかについてを、外核全体の地震波速度と物性の比較のみから結論することは不可能であることがわかった。一方、本研究より少ない組成・温度・圧力条件下で、本研究と同様の解析を行った先行研究では、外核は酸素に枯渇している(Huang et al., 2011の衝撃圧縮実験)、外核は酸素に富んでいる(Badro et al., 2014の第一原理分子動力学計算)とそれぞれで矛盾した結論を得ている。我々が構築した状態方程式を用いた場合の結果とは対照的である。さらに他の制約条件(全地球組成,ICBでの密度不連続性,P波速度の不均一性,核形成時の元素分配)を考慮して、外核の軽元素組成を制約した。 マグマオーシャンでの金属の分離過程を取り扱う数値モテル(流体力学に基ついた動径方向1-Dコード)に各元素の移流を組み込み、分離直後の金属とケイ酸塩メルトにおける各元素の濃度の計算を可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画の要点は以下の二つである。 1.鉄-軽元素系液体の第一原理分子動力学計算 2.マグマオーシャンでの金属の分離過程を取り扱う1-D数値モデリング 1については、29年度中に終了しており、2については、これから詳細な計算をする段階である。従って、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に開発したマグマオーシャンでの金属の分離過程を取り扱う1-D数値計算コードを用いて、マグマオーシャンの深さを変数とし、1-D数値モデルを用いて数値計算を行うことにより、地球化学的に推定されたコア・マントル間の元素分配とつじつまの合うマグマオーシャンの深さを特定し、分離直後のコアの組成を推定する。 この結果と、平成29年度の研究で得られた現在の外核の組成候補を比較することにより、現在のコアの組成をより詳しく制約する。さらに、平成29年度の研究で得られた各軽元素の拡散係数を用いて、地震波の観測から得られた、外核最上部層の地震波速度や厚みと整合性のあるモデルを推察する。外核最上部層の組成を検討するには複数の軽元素の組み合わせを扱う必要があり、上記で推定された現在のコアの組成とつじつまの合う外核最上部層の組成を推定する。最後に、このような外核最上部層を形成するに至る地球のコア・マントル境界付近の熱化学進化過程モデルを構築する
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Causes of Carryover |
平成29年度に、当研究費から投稿論文の掲載料の支払いが無かったため。
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