2017 Fiscal Year Research-status Report
地球物理観測と熱化学的制約を統合した月内部構造の研究
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17K05643
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
松本 晃治 国立天文台, RISE月惑星探査検討室, 准教授 (30332167)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 月内部構造 / 月マントル組成 / 潮汐加熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のベースとなるMatsumoto et al. [2015]で用いた内部構造モデルを拡張した。月を次の9層の球殻に分割した:(1)メガレゴリス、(2)地殻、(3,4,5,6)マントル1-4、(7)低速度・低粘性層、(8)流体外核、(9)固体内核。これまでは、各層の厚さ(t)、密度(ρ)、弾性率(μ、κ)、粘性率(η)をパラメータとしていたが、マントル部分(3-6)について新たなパラメータ化を導入した。すなわち、組成と温度を1次パラメータとし、これを基に2次パラメータである密度・弾性率を計算する部分を追加した。
組成パラメータとしてAl2O3, FeO, MgOそれぞれの濃度を考慮し、Kronrod and Kuskov [2009]に従ってギブスエネルギーの最小化によって熱化学的に密度・弾性率を計算した。この新たなモデルを用いて試験的にインバージョンを行った。その際、観測値として月の質量、慣性モーメント、ポテンシャルラブ数k2、1か月および1年周期のQ、および月震走時を考慮した。しかし、予想されたことであるが、温度と組成の間にトレードオフがあり、それぞれの分離が困難であることが分かった。これは、温度に感度を持つ電磁気データの重要性を示すものである。そこで、まず中間的な成果として、マントルの温度は深さ方向に一定勾配を持つと仮定し、この仮定の下に上述の地球物理学的観測と熱化学的制約の双方に調和的な月マントル構造モデルを構築した。この部分はロシアの研究協力者Ekaterina Kronrod氏を2か月間招へいして行った。
Tobie et al.[2005]に従って低粘性層における潮汐による発熱量を計算するコードを追加した。この部分は連携研究者の鎌田氏によって行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の2点について研究計画に従った進捗が見られたため:(1)パラメータとしてマントル組成・温度を追加すること、(2)潮汐加熱の計算。熱流量の計算は次年度以降実装する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿った形で、熱流量を計算する部分と電気伝導度からtransfer functionを計算する部分の実装を進める。それを受けて、内部構造パラメータから観測値を計算するフォワードモデリング、適切なモデル設定を調べるための感度解析、総合的なインバージョンと段階的に進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者のGEOKHI出張を見合わせたことにより、外国旅費に余剰が生じたため。その代わりに、研究協力者のEkaterina Kronrod氏の滞在を当初予定の1か月から2か月に伸ばして研究を進めた。H30年度に繰り越した助成金は主に外国旅費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)