2018 Fiscal Year Research-status Report
Search for hitherto unreported seafloor phenomena
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17K05646
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
深尾 良夫 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 特任上席研究員 (10022708)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海底観測 / 水圧計 / 内部潮汐 / 海洋内部波 / 津波地震 / 海溝地震 / スロースリップ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、データを解析し、その結果を論文にまとめる作業を進めた。(1)青ヶ島東方沖海底データの解析:2015年5月2日スミスカルデラ地震(M5.7)の津波記録を解析し、この地震が地震の規模と比べて津波の規模が異常に大きな所謂「津波地震」であることを明らかにし(Fukao et al., Sci.Adv. 2018)、アレー記録だけから津波波源を地震の震源よりも高精度に決められることを示し(Sandanbata et al., PAGEOPH 2018)、この津波による荷重変化が青ヶ島を如何に変形させたかを明らかにした(Nishida et al., JGR-Solid Earth, 2019)。また青ヶ島沖の海底圧力記録1年分(2014-2015)を解析し、1か月毎に半日周期の内部潮汐波を外部潮汐から分離抽出し、内部潮汐波の発生源の詳細を明らかにした(Fukao et al., JGR-Oceans, 査読中)。(2)鳥島はるか東方沖データの解析:巨大地震発生歴のない伊豆小笠原海溝でどのようなプレート間滑りが起きているかを調べつつある。これまでに2015年9月1日海溝地震(Mw=6.0)の余効変動、同月5日の小余震を契機としたslow slip、2015年12月31日海溝地震(mb=4.8)の小余震(1月2日)を契機としたslow slipを検出した。検出された海底上下変動の大きさは数cm程度、時定数は5000-10000秒程度である(2018地震学会、2018AGU Fall meeting)。(3)ParoScientific社新開発の水晶式高感度傾斜計を特注し、そのテスト観測を名古屋大学犬山観測所壕内で実施した。テスト実施中にノイズが急増する事態が発生したため、測器を会社に返送し原因を追究しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の主要部分は当初目的に沿って順調に推移し、一部は当初目的を超えて大きな成果を得つつある(例えば、open seaの海底において世界初の「津波地震」のアレー記録を得て、その解析から既に3篇の論文を国際誌に発表するなど)。こうしたデータ解析の部分に限るならば、自己評価は(1)の「当初計画以上に進展している」となるが、傾斜計のテスト観測についてはおもわぬトラブルが発生し、原因を追究中であることから、自己評価を(2)の「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
海底観測では海洋変動と固体地球変動の両方が込みで記録され、これが変動記録の解釈を難しくすると同時に、陸域観測や海洋観測では得られない新奇の地球変動現象の発見をもたらす原動力ともなる。本研究課題を通じて、このことが実証されつつある。課題に沿った個々の研究は、海洋物理学者を共同研究者とすることにより成果を得つつある。今後、こした方向を一層推進することにより、固体地球物理と海洋物理の境界領域の開拓を進めたい。本課題では高分解能水圧計10台のアレー(青ヶ島東方沖1年間+鳥島はるか沖1年間)を基本としたが、日本には恒久的な海底地震観測ネットワーク(DONET及びS-NET)があり、今後はこれを新奇海底現象の探索に活かす方向が考えられる。また、海底水圧計で捉えられた内部潮汐変動記録と潮汐効果を取り込んだ海洋循環モデル(JCOPEなど)とがよい一致を示すことから、海底地震観測ネットワークデータとJCOPEモデリングとを常時リンクさせて新奇海底現象の常時探索を進めるのも面白い方向である。高感度傾斜計に関しては、加速度計水平2成分に限って高感度化するよりも、3成分加速度計を温度遮蔽して安定化させた方がより高いパフォーマンスを得られる可能性があり、今後、この方向を追及する。
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