2019 Fiscal Year Research-status Report
木星型惑星大気の雲対流構造~放射冷却率と凝結性成分存在度に対する依存性
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17K05656
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
杉山 耕一朗 松江工業高等専門学校, 情報工学科, 准教授 (60463733)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 健介 九州大学, 理学研究院, 助教 (10192668)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 惑星大気 / 木星型惑星 / 雲対流 / 数値モデリング / 雲解像モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
凝結性成分が多い条件下で発生する雲対流の基本的特徴を調べることを目的として,H2Oの凝結に伴う対流抑制とNH4SHの化学反応に伴う対流抑制のそれぞれを念頭においた雲対流の数値シミュレーションを実行し,雲対流の構造や活発な積雲の発生するメカニズムを考察した.我々の数値シミュレーション結果より以下の3点が得られ,凝結・化学反応と分子量効果の組み合わせで生じる対流抑制は非平衡的な雲対流の構造に多大の影響を及ぼすことが検証された.(1)H2Oの存在度やNH4SHの化学反応に係る凝結性成分の存在度を従来の熱平衡計算に基づく対流抑制の閾値 (Guillot, 1995; 中島ら,惑星科学会2020年秋季大会)の数倍大きくした場合においても強い積雲が発生し,対流圏界面付近において複数成分の雲の混合が生じる.(2)分子量効果による対流抑制は,凝結高度・生成高度と強い上昇流の発生する高度の分離という形で現れることがわかった.凝結性成分の存在度が対流抑制の閾値を超えるケースにおいては,H2O凝結高度ないしNH4SH生成高度付近において凝結潜熱や化学反応による強い加熱が生じるが,分子量効果のために飽和気塊は浮力を得られず,その高度の鉛直運動は相対的に弱い.(3)強い積雲を発生させるトリガーとなるのは上空から雨として落下する凝結物である.雨の蒸発冷却に伴って生じた下降流が周囲に補償流としての上昇流を駆動し,次の積雲を発生させる.結果として積雲が組織化され,積雲集団の雲底高度が時間と共に下がりつつ凝結高度・生成高度付近の凝結性成分に富む気塊が持ち上げられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
凝結性成分が多い条件下で発生する雲対流の基本的特徴について議論を進めることができ,学会発表も順調に行うことができた.研究成果の論文としてまとめる準備を行っているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
凝結性成分が多い条件下で発生する雲対流の基本的特徴についてより深く議論するためには,凝結性成分の存在度を対流抑制の閾値よりも大きくした場合において,凝結高度・生成高度のごく近傍において発生する雲の振る舞いをより詳細に把握することが必要である.この問題に取り組むために追加のパラメタスタディを行う予定である.それに加えて,シミュレーションから得られた結果と現実の木星型惑星大気で見られる大気現象との比較検討を進める予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために年度末に予定していた出張を取りやめることになってしまったために次年度使用額が生じた.2020年度の予算と合わせて研究推進に必要なPC関連部材を購入する予定である.
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