2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05660
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
永野 憲 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (40421888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 拓也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (40466256)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フィリピン海 / 経年変動 / LADCP / AGEM |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動に大きな役割を果たしていると考えられる黒潮続流域の表層水の経年変動の起源がフィリピン東方沖にある.そこで,フィリピン東方の海洋表層における熱および物質の変動要因を明らかにするために,Altimetry-based Gravest Empirical Mode (AGEM)法を用いて海洋の三次元構造とその時間変化を明らかにし,Lowered acoustic Doppler current profiler (LADCP)データを用いて鉛直乱流拡散の時空間変動を定量的に評価する.また,それらの経年変化を明らかにする.今年度,アルゴデータをもとに作成されたMOAA GPV塩分データを解析し,フィリピン東方沖に亜表層にもENSOスケールの塩分変動が存在することを明らかにした.また,この塩分変動は,フィリピンのごく東では表層まで存在しており,黒潮続流域に運ばれる塩分変動に淡水フラックスの次に大きな寄与をしていることが明らかとなった.このことは,フィリピン東方の表層水塊変動は,淡水フラックス変動だけでなく,亜表層水塊の変動も影響していることを意味する.この結果は,すでに国際誌に掲載済みである.今後の鉛直乱流混合の解析に重要な情報を提供するものと考えられる. また,フィリピン海,13N, 137Eに係留したブイの水中データの解析から,バリアレイヤーの消滅に水平移流が重要な役割をしていることを発見した.バリアレイヤーの消失は,大気と海洋間の熱および運動量のやりとりを強める効果をしていると考えられており,フィリピン東方沖の大気海洋相互作用の解明につながると考えられる.この成果は,海外の学会で発表を行った. LADCPの解析では,海水中の鉄イオンやマンガンイオンが高酸素濃度の水塊の中で速やかに除かれていることをLADCPエコー散乱強度と深層水塊との関係から示唆することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AGEM法によるフィリピン海の三次元構造の推定を行うために,アルゴデータおよび衛星海面高度データを収集し,各データの変動特性の把握を行なった.アルゴデータの解析の結果,フィリピン東方の亜表層にもENSOスケールの塩分変動が存在することが分かった.この結果は,アルゴデータと大気再解析データの解析の論文の一部としてすでにGeophysical Research Lettersに出版された. LADCPデータと同時に取得されたConductivity-Temperature-Depth (CTD)データを集め整備し,解析に着手した.解析の副産物として,海水中の鉄イオンやマンガンイオンが高酸素濃度の水塊の中で速やかに除かれていることをLADCPエコー散乱強度と深層水塊との関係から示唆することができた.しかしながら,CTDデータとLADCPデータの時刻を一致させる処理が完了していないため,鉛直拡散係数の推定は未完である. フィリピン東方に設置した係留ブイのデータは順調に取得されており,昨年度までに取得されたデータについての解析を行った.その結果.バリアレイヤーの消滅には水平移流の効果が重要であることがわかった.この結果は,すでにOcean Sciences Meeting 2018で発表を行った. AGEM推定とLADCPデータによる鉛直拡散係数の推定は予定通りに進まなかったが,アルゴデータの解析,LADCP解析での予定外の結果,および係留ブイデータの予定よりも早い解析があり,おおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度もAGEM推定を行う.その際,年周期より長い時間スケール(経年スケール)で行う.短い時間スケール(中規模渦スケール)については,NOAAが設置している津波ブイの海底圧力データを用いて傾圧成分の抽出を試みる. LADCP/CTD解析は,これまで「みらい」航海で取得したLADCPデータの解析実績のあるハワイ大学の研究者が用いている解析プログラムを用いて進める. 来年度の「みらい」航海で2016年度に設置した係留ブイのデータが全て回収される.このデータを用いて追加解析を行い,熱・淡水フラックス,水平・鉛直移流,および鉛直拡散がフィリピン東方の海洋構造に及ぼす影響を定量的に評価する. 以上の解析から得られた結果を取りまとめ,成果を学会や論文で発表する.
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Causes of Carryover |
研究分担者の都合により,当初予定していたLADCPデータを用いた鉛直拡散係数の解析を行うことができなかったため,それに必要なPC等の購入を行わなかった.また,分担者は国際学会参加のための海外出張を行わなかった. 来年度以降,国際学会参加と論文のジャーナル投稿料に使用するとともに,分担者の使用するPCも購入する予定である.
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