2018 Fiscal Year Research-status Report
太陽圏境界領域における多成分プラズマのエネルギー分配メカニズムの研究
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17K05666
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
坪内 健 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 客員研究員 (60397601)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 太陽圏 / ピックアップイオン / ヘリオポーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽圏境界領域で発生するプラズマ構造の成長過程およびこれに伴う粒子成分のエネルギー・空間分布変動を数値シミュレーションで検証する本研究において、特に太陽圏境界から地球へ飛来する高速中性粒子(ENA)の元の成分と考えられている星間空間ピックアップイオン(PUI)のダイナミクスに関して以下の解析を進めた。 (1)太陽圏境界にせん断流が存在する状況を想定した数値シミュレーションを実行し、ケルビン・ヘルムホルツ(KH)不安定性の成長に伴うPUIの密度構造の特性をパラメータ別に検証した。特に太陽風プラズマと星間プラズマの密度比が同じ状況でも、プラズマベータ値(プラズマ圧/磁気圧比)によって著しい相違の出現が確認された。低ベータの場合には高マッハ数となる星間空間側で、KH渦の巻込みによって誘起される磁気音波が急峻化し、これがPUIを局所的に掃き集める効果が見られたのに対し、高ベータの場合には磁気音波が一様に伝播するため、PUI密度も空間的にほぼ一様となった。この特徴の違いはPUI密度の視線方向積分値プロファイルにも反映されており、IBEX衛星を始めとする観測データから太陽圏境界近傍のプラズマ環境を推定する上で有効な手段となることを示した。 (2)太陽圏境界の動径方向変動として、太陽風によって運ばれる磁場の反転構造との相互作用を想定した数値シミュレーションを実行した。反転磁場が境界で圧縮されることによって駆動される磁気リコネクションが進むにつれて、PUIがこの磁場の再結合領域に局在化していく過程を確認した。この結果より、太陽圏境界で磁気リコネクションが起きた場合に対応したPUI密度の視線方向積分値プロファイル特性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
太陽圏境界におけるKH不安定の成長に応じるPUI密度の空間構造が、周辺プラズマの初期パラメータに強く依存することが確認されたため、その物理特性の解明にあたってはより広汎なパラメータ検証が必要になった。そのため、動径方向の圧縮過程を検証するシミュレーションへの着手が少し遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、太陽圏境界に局在する高エネルギー粒子密集領域の非定常変動特性の解明に努める。本課題の最終年度にあたり、IBEX衛星によるENA観測との関連付けを行うための、太陽圏境界の動径/シアー成分変動がPUI分布に及ぼす影響に関するパラメータ分類を更に進める。また太陽圏内部のPUI成分も含めた計算を行い、より広範囲に渡るエネルギー領域におけるプラズマの分布特性を総括する。
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Causes of Carryover |
年度内の論文公表を見送った分が次年度使用額として繰り越された。次年度においては、これを論文出版関連費用に充てて使用する。
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