2017 Fiscal Year Research-status Report
泥炭ウイグルマッチング法を用いた第四紀テフラの高精度年代決定
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17K05676
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮入 陽介 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (30451800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 玲介 皇學館大学, 教育開発センター, 准教授 (30409437)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 放射性炭素年代測定 / 加速器質量分析 / Ta-aテフラ / ウイグルマッチング / 泥炭 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の初年度にあたる平成29年度は、泥炭ウイグルマッチング法の年代決定精度を確認するために、年代既知のテフラを含有する泥炭地での分析を行う。そのために噴火年代が明らかな樽前火山のテフラを含む調査地の選定を行った。その結果、北海道北部の猿払村の猿払川流域の湿原を実証実験地域と選定した。同地域には樽前火山起源の火山灰「樽前-a(Ta-a)テフラ」(1739(元文4)年8月18日~30日噴火)の堆積が認められる。また同地域では2015年11月に、北海道大学の研究グーループが過去に機械式ボーリングの掘削調査も行っており、保存状態の良い柱上試料(試料名:HU-SRN-1)が入手できることが判明した。 同ボーリングコア試料が本研究課題の分析に適したサンプルであるかを評価するために、北海道大学の研究グループより、同ボーリングコア試料の一部試料の提供を受け、14C年代測定を行い、同湿原の堆積環境の復元を行った。その成果については(嵯峨山ほか2018)として『地球科学』誌に論文投稿を行い、同紙72巻1号に掲載された。同検討の結果、今回の分析を行う層準に関しては淡水化していたことが判明し、本研究課題の分析に適したサンプルであることが確認された(海水の影響がある環境下では海洋リザーバー効果の影響の評価が必要となり、本研究課題の分析試料としては不適切である)。 同ボーリングコア(HU-SRN-1)の年代分析の結果、同地域の泥炭地はTa-aテフラ近傍に大きなイベント性の堆積物の混入も少なく、泥炭ウイグルマッチング法の年代決定精度を確認に有効な試料である可能性が示唆された。現在、平成30年4月に同コアより連続サブサンプリング作業を行う計画にしており、来年度(平成30年度)初頭から連続放射性炭素年代測定の分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
泥炭ウイグルマッチング法の年代決定精度を確認するために、年代既知のテフラを含有する泥炭地の選定を行った。歴史時代の噴火に由来するテフラの堆積層が認められ、泥炭の保存の良い地域の選定を行った。その結果北海道北部地域を選定した。 同地域は樽前火山の噴出物「樽前a(Ta-a)テフラ」の分布範囲である。この樽前aテフラは樽前山の東北部に分布範囲をとり、北海道北部地域の歴史時代噴火では非常に識別が容易なテフラである。また同地域はTa-aテフラ以外の歴史時代の明瞭なテフラの堆積がない(多数のテフラを含有している地域を対象とした場合、テフラの識別が困難となり、初年度の目的にそぐわない)ため良好な研究地域であることが分かった。 同地域の中でも猿払村の猿払川流域の湿原を研究地域に選定した。同地域では、2015年11月に、北海道大学の研究グループが過去に機械式ボーリングの掘削調査も行っており、同グループより残試料の一部を譲渡いただけることとなり、保存状態の良い柱上試料が入手できることが判明した。当初の計画ではジオスライサー等を用いてサンプリングを行う予定であったが機械式ボーリングによる保存状態の良い試料が入手できることとなった。ただ同地域では湿原が一時期汽水化した可能性も示唆する堆積環境が認められ、北海道大学の研究グループと共同で堆積環境の検討を行う必要が生じた。その結果本研究に用いるコアの上層部分では淡水化しており、本研究の分析に適した試料であることが分かった。その結果に関しては、嵯峨山ほか(2018)として論文投稿し掲載済みである。上記の検討を行った結果、連続サンプルの分析についてはやや遅れており、平成30年4月に連続サブサンプリングの実施、分析を予定している。一部遅れている分析項目もあるものの、上記のように成果も上がってきており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の前期は、猿払村の猿払川流域の湿原試料の連続分析を行う。同コア試料に含まれているテフラはTa-aテフラであることが同定されており、Ta-aテフラを狭在する泥炭コア試料の連続サンプリングを行う。同サンプリング作業は、平成30年4月に北海道大学農学部にて行うように調整をしている。サブサンプリング作業が終わり次第、放射性炭素分析を行う。 平成30年度後期はその有史時代のテフラでの検討結果を踏まえて、摩周火山由来テフラ等の歴史記録のないテフラの年代決定を行う、対象フィールドとしては北海道根釧原野、斜里湿原等を計画している。平成30年6月に現地調査を行う計画であり、その際にパイロットサンプルの採取を行いテフラの同定、放射性炭素年代測定を行う。テフラの同定に関しては研究協力者と現在調整を行っており、現地調査が完了次第分析作業を行えるように準備をしているところである。放射性炭素年代測定に関しても加速器質量分析計のマシンタイムの確保等関係者との調整を現在行っている。
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Causes of Carryover |
初年度の研究の遂行にあたり、当初予定していた泥炭試料のサンプリングの前に、適切なコア採取地を選定するために事前の検討が必要になった。そのため選定作業のための事前の放射性炭素年代測定や珪藻分析等の古環境解析を行い、その結果をもとに適切な候補地の選定を行った。その新たな分析作業に伴い、泥炭コアの連続サンプリング作業は平成30年4月に延期となった。 当初予定よりも実施が遅れている柱状サブサンプリングは、平成30年4月に予定をされており、平成29年度の未使用金は4月に行われる同サブサンプリング作業に伴う旅費として使用する予定である。それ以外の分析はおおむね順調に進行しており、翌年度分として請求した助成金の使途に変更はない。
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Research Products
(6 results)