2017 Fiscal Year Research-status Report
琵琶湖における珪藻の大型化とその背景となった湖水深変動の解明
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17K05695
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 めぐみ 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (40455423)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 珪藻 / 琵琶湖 / 形態学的進化 / 大型化 / 古水深 / 地球化学分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の齋藤は、琵琶湖湖底堆積物中の珪藻分析に着手した。まず、国立科学博物館に保管されていた琵琶湖湖底より採取されたボーリングコアBIW08より層厚1cmごとに採取された堆積物7400試料を整理した。次に、効率的な永久プレパラートの作製方法を検討して、プレパラートの作製を開始した。堆積物試料は、十分に乾燥させて秤量したのち、過酸化水素水で分解し、スクリュー管瓶に懸濁液として保管した。これらの懸濁液の一部を希釈して、珪藻化石観察のためのプレパラートと電顕観察用の濾過試料を作製した。珪藻化石の包埋作業においては、パラフィン伸展器を1台導入して作業の効率化をはかった。2017年度中に、総試料のうち約3000試料について、珪藻化石包埋作業の前段階である懸濁液が完成し、約1000試料についてプレパラート作製が完了した。検鏡作業のために、接眼マイクロメータを準備した。これらの作業と並行して、琵琶湖における珪藻の形態進化の速度と様式に関して、学術雑誌に総説を発表した。そこにおいて、珪藻の形態進化の速度が時代によって変化する要因について論じ、湖環境の変化(水深の変化を含む)が珪藻の形態進化を引き起こした可能性について既存研究の成果を用いて検討した。 研究協力者の豊田は、200mコアを用いた地球化学的な分析を行った。国立科学博物館に保管されていた琵琶湖湖底より採取されたボーリングコア200mコアから分取された208層準について水酸化物相におけるヒ素を抽出しICP-AES を用いて測定した。その結果によれば、琵琶湖における過去の水深の指標となると考えられてきた水酸化物相におけるヒ素含有量には、珪藻の大型化と同時期の水深の増大は認められず、より古い時代に水深の増大があったことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
珪藻分析の進捗は、予定よりもやや遅れている状況であるが、プレパラート等の作製に効率的な手法を確立し、珪藻化石を観察するための試料を着実に準備している。一方で、化学分析はすでに予定していた測定を終え、その解釈を検討する段階へと進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の齋藤においては遅れている検鏡作業を進める。火山灰や砂質分の多く含まれる試料を避けて、観察に適した層準を選び、スズキケイソウとその祖先種について、その相対的な出現頻度、堆積物単位質量あたりの含有量、殻の直径を測定する。珪藻の大型化が起こった層準を特定するまでは、数百年ほどの試料間隔で検鏡して、層序学的な変化の概要を把握する。珪藻の形態学的な進化や大型化が起こった層準の前後においては、検鏡間隔を詰めて層厚1cmごとに作製したプレパラート全て(約30年間隔)を検鏡する。これらの観察にもとづいた新知見をまとめるには時期尚早であるので、琵琶湖の環境変化と珪藻の形態進化に関してこれまで行われた研究を整理して国内学会等で報告する。本研究に課せられた課題を議論し、今後の研究の展開に反映させる。 研究協力者の豊田においては、ヒ素含有量の結果を適切に解釈するために追加実験を行なう。また、文献探索を行なって、過去の水深を推定する他の指標を調査するほか、水深以外の環境要素の変化を明らかにすることを試みる。
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Causes of Carryover |
研究に必要な物品を購入し、プレパラート作製のための謝金を当館規定にもとづいて支払った。その結果、交付額とのあいだに差額が生じたため。
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Research Products
(2 results)