2018 Fiscal Year Research-status Report
若いスラブの沈み込み火成活動とアダカイト質マグマ発生の限界
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17K05700
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
加々島 慎一 山形大学, 理学部, 准教授 (70361243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊郎 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20392946)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 低Sr同位体比 / パタゴニア・バソリス / 花崗岩 / 斑れい岩 / ジルコンU-Pb年代 / アダカイト質 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,前年度(平成29年12月)の現地調査で採取した岩石試料の岩石薄片作製,顕微鏡観察,岩石記載,全岩化学分析,Sr同位体分析,一部の試料についてはジルコンの抽出とLA-ICP-MSによるU-Pb年代測定を行った.これらの新知見により,初年度に到達した地点に産する花崗岩類は,アダカイト質マグマではない可能性が見いだされた.そのため,今年度(平成30年度)の調査では,先行研究結果と照らし合わせ,プエルトアイセンおよびプエルトシスネス周辺のサンプリングを広範囲に行った.平成31年3月10日~24日の期間,研究代表者の加々島,研究分担者の高橋,および研究協力者の三浦(大学院生)の3名で渡航し,チリ国内移動・調査準備等を経て,中5日間の現地調査を実施した.調査地は,北部パタゴニア地方アイセン州のプエルトアイセン,プエルトチャカブコ,プエルトシスネスである.アウストラル街道沿いの露頭のほか,山間部への未舗装道路を利用し,前年度よりも広範囲からサンプリングを行った.MMEを含む中粒黒雲母花崗岩,粗粒角閃石斑れい岩,中粒優白色花崗岩,細粒閃緑岩,トーナル岩質片麻岩,含ざくろ石片麻状花崗岩,含ざくろ石片麻状石英閃緑岩等,多様な岩石試料をみいだすことができた.今後の研究協力体制作りを兼ね,チリ・カトリカ大学のEugenio A. Veloso准教授のサポートを得て,アイセン州からの岩石試料持ち出しも順調に行うことが出来た.採取し日本へ移送した(3月末着)試料は20試料40kgで,現在岩石薄片作製,顕微鏡観察をすすめている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画・方法に示している通り,花崗岩類の成因論が進んでいない地域であり,地球化学的データの取得と公表が重要である,このため,【1】現地調査,【2】花崗岩類の成因論(全岩・鉱物化学分析),【3】花崗岩類の年代論の3段階に分けている.現地調査は初年度と2年目の2回で,どちらも実施され,新鮮な岩石試料の採取と日本への持込みが完了した.成因論と年代論のための化学分析を進めているところであるが,南半球高緯度地域での調査のため,日本の年度の後半に実施せざるを得ず,岩石試料が手元に届いてからの作業が翌年度となってしまうため,実質半年から1年近く求める成果を得ることが遅れる.ただ,これは当初計画時点から想定されていることであり,少なくとも一部の成果はでており,概ね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で採取した試料数は56個で,花崗岩~ハンレイ岩の多様な深成岩類を入手することができた.現在進行中の地球化学的データの取得を最優先し,代表される試料を選択しジルコンのU-Pb年代測定を進める. パタゴニア地方アイセン州からの岩石試料の持ち出しは非常に厳しいため,チリ・カトリカ大学の研究者のサポートを得た.本研究課題を含め,今後の研究協力体制を構築したことで,この地域の研究を深化することが可能となった.
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