2018 Fiscal Year Research-status Report
Spatiotemporal scale of isotope disequilibria in the mantle, deduced from lithium isotope compositions of mantle peridotite
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17K05706
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
太田 努 岡山大学, 惑星物質研究所, 助手 (80379817)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リチウム同位体 / 水流体 / カンラン岩 / マントル内物質循環 / 二次イオン質量分析計 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,幌満カンラン岩試料の記載と分析を進めながら,前年度に引き続き,水素濃度局所分析の実質的な検出限界や分析精度の評価,分析条件の最適化を行った. SIMS分析の条件を改良したことによって,水素濃度局所分析の標準物質,サンカルロス産マントルゼノリスのカンラン石(先行研究によれば,含水量は1 wt.ppm H2O以下)について,その含水量を誤差約20%で1-2 wt.ppm H2Oと見積もることが可能になった.そこで,幌満カンラン岩試料のうち,二次的変質による蛇紋岩化が進んでいて全岩の含水量が最も高い(岩体縁部の,地球化学的特徴の改変が著しい)試料と,顕著な二次的変質が認められない(岩体中央部の,初生的な地球化学的特徴の保存がよい)試料について,主要鉱物(カンラン石,輝石,斜長石)の水素濃度局所分析を再度行い,リチウムや希土類元素を含む微量元素組成,およびリチウム同位体組成との関係を調べた.また,一連のSIMS分析を行った鉱物の組織を,電子顕微鏡を用いて観察した.その結果,幌満カンラン岩試料のカンラン石は,典型的なマントルカンラン岩のそれより有意に含水量が高いこと,二次的変質の効果が顕著な試料では,リチウム同位体組成の変動とともに,リチウム濃度や含水量も高くなる傾向があることがわかった.ただし,カンラン石の変質による蛇紋石以外にも,ミクロンサイズの角閃石や沸石といった含水鉱物が輝石や斜長石の縁に生じていて,それらによって見かけ上,高い含水量が得られている場合も確認された.今後の分析では,そのようなミクロンサイズの含水鉱物に留意する必要がある. また,これまでに行ってきたリチウム同位体分別の実験岩石学的研究の成果や,リチウムや水素を含む軽元素の鉱物-水流体間における分配や同位体分別を扱った研究の成果を論文にまとめ,国際学術雑誌に発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,水素濃度局所分析用の試料準備や標準物質の整備,および実質的な検出限界や分析精度の評価,分析条件の最適化が,前年度までに完了している予定であったが,実質的な検出限界の評価と分析条件の最適化の行程が,今年度に持ち越しになっていた.このため,幌満カンラン岩試料の化学分析が全般的にやや遅れており,特に水素濃度局所分析については,現時点で,当初の予定の60%程度までしか完了していない. 今後は,整備した標準物質や,確立した試料準備および局所分析の方法を用いて,幌満カンラン岩試料を系統的に分析していくと同時に,結果の解析も進めていく.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画にしたがって,幌満カンラン岩類の岩石記載・化学分析を進め,結果を解析・総括する.これまでのところ,岩体規模におけるリチウム同位体不均質を把握する上で不可欠な化学分析や結果の解析がほぼ完了したので,引き続き露頭規模,岩石薄片規模の解析に向けた分析を進めていく. 幌満カンラン岩類の中には,二次的変質による蛇紋岩化が進んでいるものを除いても,典型的マントルカンラン岩の十倍以上もの水を含むものがある.これは,カンラン岩を構成する主要鉱物の縁部や割れ目に,光学顕微鏡レベルでは検知できないミクロンサイズの二次的含水鉱物が生じているためであることがわかった.全岩の含水量が高い試料では,主要鉱物の含水量もやや高い傾向があるが,その違いが分析領域に存在した含水鉱物に起因している場合もある. 今後の分析では,より詳細な組織観察を踏まえて分析領域の選定や分析結果の評価を行い,主要鉱物の含水量とリチウム同位体組成の関係を調べ,そして,岩体規模,露頭規模,岩石薄片規模におけるリチウム同位体不均質を明らかにする.その結果をもとに,水素やリチウムといった軽元素に関するマントル内不均質・非平衡の時空間スケールについての知見をまとめ,投稿論文に仕上げる.
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Research Products
(4 results)