2019 Fiscal Year Annual Research Report
Spatiotemporal scale of isotope disequilibria in the mantle, deduced from lithium isotope compositions of mantle peridotite
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17K05706
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
太田 努 岡山大学, 惑星物質研究所, 助手 (80379817)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リチウム同位体 / 水流体 / カンラン岩 / マントル内物質循環 / 二次イオン質量分析計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,軽元素に関するマントル内不均質・非平衡の時空間スケールを解明することを目指し,様々な熱的・化学的進化を経てきたマントルカンラン岩(北海道幌満カンラン岩体)について,リチウムと水素を中心に,それらの分布を異なる時空間スケールで記載してきた.本年度は,幌満カンラン岩の補足的な化学分析を加えてこれまでの結果を総括し,学術雑誌への投稿論文執筆を進めた.
幌満岩体は,露出面積8×10平方キロメートル,層厚3キロメートルに及ぶ大規模なマントルカンラン岩体である.その地球化学的特徴を,岩体のキロメートルから,露頭の数メートル,さらに構成鉱物の数十ミクロンの規模に渡って解析し,リチウム同位体や水流体と挙動をともにする元素の存在量や分布を明らかにした結果,次ような結論を得た.幌満岩体には(1)約十億年前の海嶺下での部分溶融とその後の海洋底熱水変質,および約一億五千万年前の島弧―海溝系での沈み込み帯流体との交代作用が,多様な同位体組成や特徴的な元素比として記録されている.(2)その地球化学的特徴の,二次改変の程度が岩体内部で異なるため,岩体全体では,ある同位体系の平衡が破れているが,岩体縁部の約1キロメートル幅の領域に限れば,約一億五千万年前のイベントによる同位体平衡が達成されている.(3)岩体中央の幅1キロメートルほどの領域では,約十億年前の海洋底熱水変質の記録が,特徴的なリチウム同位体組成や微量元素濃度として保存されており,その水素濃度は典型的な溶け残りマントルの十倍以上に相当する.
海嶺下での部分溶融と海洋底熱水変質は地球史を通じて普遍的な現象であり,幌満岩体は希少な存在ではない.このような高水素濃度物質が十億年の時間スケールで,高温高圧のマントル内部を循環していたであろうという本研究の結論は.マントルのダイナミクスや化学進化を理解する上で,重要な示唆を与えると考えられる.
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Research Products
(2 results)