2018 Fiscal Year Research-status Report
Thermodynamic model for volumetric property of hydrous magmas
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17K05707
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山下 茂 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (30260665)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 実験岩石学 / マグマ / 水 |
Outline of Annual Research Achievements |
高温高圧その場観察の予備実験の結果をあらためて解析したところ、含水量3 wt%の含水アルバイトガラスを出発物質に用いた実験では、770℃―0.8GPaで結晶化が起きていることがわかった。この温度―圧力条件は、含水アルバイト系の先行研究における含水量3 wt%の固相―メルト相境界と整合的なので、固相―メルト相平衡がおおむね達成されていたと考えられる。外熱式ダイヤモンドアンビルセル装置で達成可能な温度条件(最高900℃)を考えると、高温高圧その場観察の温度―圧力範囲をなるべく大きくするには、出発物質の含水アルバイトガラスの含水量を大きくして固相―メルト相境界の温度を下げる(=メルト相の安定な温度―圧力範囲を広げる)、加熱冷却速度を上げて結晶化が起きにくくする(=過冷却状態のメルト相を観察する)のふたつの解決策が考えられる。そこで、出発物質として含水量の大きな含水アルバイトガラス(含水量8.2 wt%と10.9 wt%)を合成することを試みた。この研究で意図している熱力学的解析では高温高圧その場観察のあいだ含水アルバイトメルト/ガラスの含水量が変化しないことが必要なので、出発物質のガラスには余分な流体包有物(気泡)が含まれていてはいけない。ブラジルMinas Gerais産の天然アルバイト結晶を粗粉砕し、大気雰囲気900℃で加熱することで包有物として存在しうる流体を取り除いた。これを分量の純水とともにPtカプセルに封入し、ピストンシリンダー型高温高圧装置で1200℃―1.0GPaで溶融させたあと急冷することにより、完全に清澄な、気泡を含まない高含水量の含水アルバイトガラスを合成することができた。今後、これらのガラスを出発物質に、なるべく広い温度―圧力範囲で高温高圧その場観察を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者のエフォート割当の見積もりが甘く、含水アルバイトメルトの高温高圧その場分光観察へ本格的に展開できなかったが反省される。平成31年度(令和元年度)には研究代表者が本課題に重点的に取り組みエフォート割当を増やすことで、遅れは解消できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って含水アルバイトメルトの高温高圧その場分光観察を行う。平成31年度(令和元年度)では、観察の出発物質に用いる含水アルバイトガラスの含水量を8.2 wt%と10.9 wt%に調整することにより、アルバイトの固相―メルト相境界のメルト相安定側の温度圧力範囲をなるべく広げて観察を行うことに留意する。この含水アルバイトガラスを13Cダイヤモンドまたはジルコン圧力マーカーとともに外熱式ダイヤモンドアンビルセル装置に封入、メルト状態に加熱・加圧して高温高圧その場分光観察を行う。具体的には、(1)メルトに溶け込んでいるH2O分子、OH基それぞれの濃度を赤外分光により測定、(2)試料室のジオメトリーを可視光で観察することにより試料メルトのバルク体積変化を測定する。初期封入圧力を調整することで、なるべく広い温度―圧力範囲をカバーするように高温高圧その場分光観察を繰り返す。結果を温度―圧力―メルト含水量の関数として整理し、メルトへ溶け込んでいるH2O分子、OH基それぞれの部分モル体積がexplicitなかたちの平衡条件式に回帰させる。これにより含水メルト体積の熱力学モデルを構築する。
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Causes of Carryover |
この研究で使用する顕微赤外/ラマン分光光度計は過去9年間にわたり高温高圧その場観察に使用されてきた。今年度になって、光スループットの劣化、可視光イメージの劣化が目立ってきている。これは、顕微光学系が長年にわたって高温の外熱式ダイヤモンドアンビルセル装置に暴露し、集光ミラーやビームスプリッターが輻射熱で歪んだり、昇華物の沈着で汚れたりしてきているためと考えられる。質の良い(S/Nの良い)赤外/ラマンスペクトル測定と可視光画像取得には顕微光学系のオーバホールが必要であるが、それには相当の費用が見込まれる。そこで、本科学研究費補助金が繰り越し可能なことを活かし、平成30年度からの繰り越しぶんと平成31年度(令和元年度)補助金の一部をあわせて、顕微光学系のオーバホールを行う予定である。なお、平成31年度(令和元年度)補助金の大部分は、当初の計画どおりにダイヤモンドアンビル、タングステンカーバイドコアヒーター、ガスケット材料、還元雰囲気ガスの購入に使用する。
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