2017 Fiscal Year Research-status Report
X線自由電子レーザーを用いた衝撃圧縮下における物質挙動の超高速時分割その場観察
Project/Area Number |
17K05714
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
丹下 慶範 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (70543164)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 衝撃圧縮 / X線回折 / X線自由電子レーザー / 岩石鉱物 |
Outline of Annual Research Achievements |
X線自由電子レーザーの登場により、第三世代放射光と同等の高品質なX 線回折データを数フェムト秒という極めて短い時間で取得することが可能になった。これにより、これまで困難であった衝撃圧縮された物質内部でごく短時間に生じる、圧縮から破壊へといたるまでの現象が、時間を追って詳細に観察されつつあり、申請者はこれまでX 線自由電子レーザー施設SACLA において、高強度レーザーを用いたポンププローブ測定の実験基盤整備に携わってきた。平成29年度は、明瞭なX線回シグナルが得られるコランダム多結晶体を用い、パルス幅3ナノ秒のポンプレーザーを用いた系統的な測定を進めた。 大面積ふラットパネル検出器を使用し、200ピコ秒間隔で時分割データを取得したところ、これまでの時分割測定では追跡できていなかった、衝撃波が試料に到達し内部を伝播する際に生じる圧力変化や差応力の発生、さらにその緩和過程までを明確に観察することができた。ピーク圧力の時間発展については、流体シミュレーションの結果と概ね一致する結果が得られたが、塑性変形領域でも一軸圧縮静性が有意に維持されることなど、従来のモデルでは知られていなかった物性情報が得られた。またポンプレーザーの集光サイズの変化に伴うピーク圧力の増減と内部で生じる差応力状態の変化なども観察されており、今後は静圧縮実験による低歪み速度データと統合的に結果を解釈するために、詳細な応力解析を進める。 今後は試料ターゲットの改良を進めてより精密なX線回折データ取得を試み、コランダムで確立された実験解析技術や知見をもとに他の多結晶鉱物試料へも応用範囲を広げ、衝撃圧縮による高圧相転移のその場観察を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度中にコランダム多結晶体を用いた標準データ収集を完了するという当初目標は達成でき、さらに金スパッタ成膜を利用した試料位置決定方法と合わせ、他の試料で実験を行う際の基準として利用できる再現性の高い実験技術、データを確立できた。また当初計画していた、ダイヤモンド薄膜を用いた圧力保持時間伸長を目的とした技術開発とは異なるものの、多結晶コランダムと単結晶コランダムを組み合わせた、より精密なX線回折データを得るためのターゲット構造を開発するなど、レーザー衝撃圧縮その場観察実験技術の高度化にも取り組み始めた。これはポンプレーザーの高エネルギー出力が可能になったことや、レーザー集光径の減少による高圧力発生が可能になり、必要とされる開発技術が変化したための変更であり、全体計画としては当初よりやや進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
多結晶コランダム試料については基礎データの収集が終わったため、今後は詳細な応力解析を行い、高歪み速度場における変形破壊現象の標準的な観察結果としてまとめ、迅速な国際誌への発表を目指す。細密なX線回折データ取得を目指して開発を開始したターゲットの改良を引き続き進め、当初計画していたコランダムの高圧相転移の観察を目指す。またコランダム試料で得られた知見や実験技術を他の物質へと応用し、結晶系や材料強度がコランダムと大きく異る酸化マグネシウムや 、コランダムに比べ低圧力で相転移が起きると予想される石英やカンラン石の多結晶体などを試料とした対照実験を行う。
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Causes of Carryover |
実験技術の開発期にあたる1年目には試料構成などが固定されず、薄膜試料の発注数を抑える必要が出たため。技術がおおよそ確立された2年目以降は薄膜実験試料や貴金属箔、貴金属スパッタリングターゲットの消費が多くなるため、翌年度分として請求した助成金はそれらに使用する。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Pressure generation to 65 GPa in a Kawai-type multi-anvil apparatus with tungsten carbide anvils2017
Author(s)
Takayuki Ishii, Daisuke Yamazaki, Noriyoshi Tsujino, Fang Xu, Zhaodong Liu, Takaaki Kawazoe, Takafumi Yamamoto, Dmitry Druzhbin, Lin Wang, Yuji Higo, Yoshinori Tange, Takashi Yoshino, Tomoo Katsura
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Journal Title
High Pressure Research
Volume: 37
Pages: 507-515
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Phase Relations in the System MgSiO3‐Al2O3 up to 2300 K at Lower Mantle Pressures2017
Author(s)
Zhaodong Liu, Masayuki Nishi, Takayuki Ishii, Hongzhan Fei, Nobuyoshi Miyajima, Tiziana Boffa Ballaran, Hiroaki Ohfuji, Takeshi Sakai, Lin Wang, Svyatoslav Shcheka, Takeshi Arimoto, Yoshinori Tange, Yuji Higo, Tetsuo Irifune, Tomoo Katsura
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Journal Title
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
Volume: 122
Pages: 7775-7788
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Topology and thickness of the ringwoodite-bridgmanite+ferropericlase binary loop in the system (Mg,Fe)2SiO4: interpretation of the sharpness of the 660-km discontinuity2017
Author(s)
Tomoo Katsura, Takayuki Ishii, Rong Huang, Fumiya Maeda, Liang Yuan, Shrikant Bhat, Robert Farla, Takaaki Kawazoe, Tsujino Noriyoshi, Zhaodong Liu, Hongzhan Fei, Lin Wang, Dmitry Druzhbin, Takafumi Yamamoto, Eleonora Kulik, Iulia Koemets, Yuji Higo, Yoshinori Tange
Organizer
AGU Fall Meeting 2017
Int'l Joint Research
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[Presentation] New results of the post-spinel transition pressure in Mg2SiO4 by means of in-situ X-ray diffraction in a multi-anvil press: complete agreement with the 660-km discontinuity depth2017
Author(s)
Takayuki Ishii, Rong Huang, Hongzhan Fei, Iuliia Koemets, Zhaodong Liu, Fumiya Maeda, Liang Yuan, Lin Wang, Dmitry Druzhbin, Takafumi Yamamoto, Shrikant Bhat, Robert J Farla, Takaaki Kawazoe, Noriyoshi Tsujino, Eleonora Kulik, Yuji Higo, Yoshinori Tange, Tomoo Katsura
Organizer
AGU Fall Meeting 2017
Int'l Joint Research
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[Presentation] 衝撃圧縮された多結晶コランダムの時分割 XFEL その場観察2017
Author(s)
丹下慶範, 尾崎典雅, 瀬戸雄介, 佐藤友子, 奥地拓生, 松岡健之, 高橋謙次郎, 宮西宏併, ALBERTAZZI Bruno, HARTLEY Nicholas, 梅田悠平, 西川豊人, 松山智至, 山内和人, 関根利守, 田中和夫, 兒玉了祐, 籔内俊毅, 矢橋牧名
Organizer
第58回高圧討論会
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[Presentation] フォルステライト単結晶の超高速一軸圧縮と格子すべり相転移2017
Author(s)
奥地拓生, PUREVJAV Narangoo, 尾崎典雅, 松岡健之, 高橋謙次朗, 瀬戸雄介,丹下慶範, 犬伏雄一, 矢橋牧名, 富岡尚敬, 関根利守, 田中和夫, 兒玉了祐
Organizer
第58回高圧討論会
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[Presentation] 地球外核条件における融解鉄合金の輸送特性に関する実験的研究2017
Author(s)
西川豊人, 尾崎典雅, HARMAND Marion, 丹下慶範, 近藤良彦, 池谷正太郎, ALBERTAZZI Bruno, 宮西宏平, 重森啓介, 坂和洋一, 佐野孝好, 兒玉了祐
Organizer
第58回高圧討論会
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