2017 Fiscal Year Research-status Report
密度限界へ遷移する非中性プラズマの時空間構造解明と大強度イオンビーム制御への応用
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17K05724
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
曽我 之泰 金沢大学, 数物科学系, 助教 (90525148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 崇志 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (30375521)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非中性プラズマ / 空間電荷支配ビーム / プラズマ圧縮 / エネルギー分布計測 / 2流体不安定性 / 重イオン慣性核融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
Malmberg-Penning トラップに捕捉した高密度電子プラズマを外部電位操作により磁場方向に圧縮し,その過程で生じるエネルギー分布関数の時間発展を実験,数値計算の両面から検討することにより,重イオン慣性核融合のエネルギードライバーにおけるビーム圧縮に対して有用な基礎データを提供することが本研究の目的である. 本年度は,磁場強度最大2.2Tの超電導磁石を備えた電子プラズマ閉じ込め装置を京都大学から移設した.当初の予定ではBrillouin密度限界の電子プラズマを生成するための専用装置を起ち上げる予定であったが,磁場強度を広い範囲で制御でき,磁場方向に多数の電極を有し,既に数々の研究成果が得られてきた実績のある本装置を用いて電子プラズマの圧縮実験を進めるほうが有利と判断した. 並行して,既存の電子プラズマ閉じ込め装置による基礎実験をおこなった.電子プラズマ生成直後の対向する速度成分を有する状況においてエネルギー分布関数の時間発展を計測し,shifted Maxwellianをベースとしたモデル関数を用いて実験データを解析する方法を開発した.さらに,マイクロ秒オーダーの速い時間スケールで,高速粒子生成を伴うエネルギー分布緩和を直接観測することに成功した.この速い緩和機構を解明するため,電子プラズマの1次元モデルによる数値計算により検討した結果,2流体不安定性により緩和が生じる可能性があることが示唆された. 電子プラズマ圧縮実験では,パルス幅2ミリ秒で軸方向に4分の1の長さに電子群を圧縮した.その過程でエネルギー分布を計測した結果,軸方向・径方向ともに圧縮によって温度が上昇していることが判った. 実験パラメータをベースとした3次元数値計算により,圧縮時のエネルギー分布関数を観測した結果,実験結果を定性的に説明できる温度上昇を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子プラズマ実験において,磁場強度は電子プラズマの寿命に直接関係するため,強磁場閉じ込め装置を整備できたことは本研究の遂行に極めて有利である.荷電粒子ビームの進行方向圧縮において不可避である対向する流れがある状況を電子プラズマを用いて模擬し,そのエネルギー分布計測で得られたデータは,新たに開発した解析法とともに論文化の過程にある.また,基礎実験中に偶然得られたものであるが,高速粒子の生成を伴うエネルギー分布緩和を直接観測したデータは,再現性をチェックした上で,ひとつの纏まった研究成果となることが期待される.以上より,本研究は順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
超電導磁石を備えた電子プラズマ閉じ込め装置を起ち上げ,高密度電子プラズマを生成する.初期分布生成後,閉じ込め電位分布の制御により,軸方向長さ1/10まで電子プラズマを圧縮し,密度・エネルギー分布を測定する.圧縮方法と圧縮時間に対する密度・エネルギー分布の時間発展の依存性を明らかにし,空間電荷に支配されたビームのエミッタンス変化として解釈する.並行して,波動・輸送特性を観測し.Brillouin密度に近い電子プラズマの性質を実験的に解明する.
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では新しい電子プラズマ閉じ込め装置を起ち上げる予定であったが,超電導磁石を備えた大型実験装置を本学へ移設するかどうかの打診があり,本研究の遂行に有利であると判断しこれを受諾した.その移設費に当該年度の経費を充てたため,次年度使用額が生じた.本装置は長期間使用されていなかったため,次年度使用額は,冷凍機,超電導磁石のメンテナンス費用に充てる予定である.
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