2017 Fiscal Year Research-status Report
Processing of wide-bandgap material with intense EUV light
Project/Area Number |
17K05727
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 のぞみ 大阪大学, レーザー科学研究所, 特別研究員(RPD) (60581296)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 極端紫外(EUV)光 / 薄膜 / ワイドバンドギャップ材料 / X線光学 / 粒子スパッタリング / 反射粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、レーザー駆動高強度極端紫外(EUV)パルス光を用いてワイドバンドギャップ(WBG)材料、また透明材料をアブレートさせることによる新しい材料プロセシングの可能性を明らかにすることを目的として実施しており、薄膜生成(成膜)を中心に研究を遂行している。 当該年度は光源からの高速Xeによる集光回転楕円鏡由来のAuデブリ抑制システムの定量評価を行った。二枚の回転楕円鏡とその間の中間集光点を取り囲むように設置した物理シールドからなる光学配置に対し、先行研究では検出限界(0.01%)以下までのデブリ抑制能力が確認されている。当該年度はXeイオンとスパッタされたAu粒子の絶対量を、Xeイオンの角度分布エネルギー分布計測と、そのデータを用いたTRIM計算により求め、ターゲットに到達するAu粒子は工夫を施さない一枚回転楕円鏡の配置と比較し3桁抑制されることを明らかにした。この提案したデブリ抑制方式が有効であることが明らかとなったため、今後使用していく方針とした。以上の結果に関して、春季応用物理学会で成果発表を行いOptics Expressに論文を投稿中である。 Siの成膜では目視でも膜の形成が確認された。XRR(X線反射法)分析を行い、28 nmの膜厚であることが分かった。これは薄膜としての分析を今後行っていくにあたり十分な膜厚である。また密度は1.8 g/cm3 であり、Siの2.33 g/cm^3 よりも小さかった。理由として基盤加熱などをせずに成膜した結果、焼結が起こらず粒子が疎に堆積していることを示している事が考えられる。更に代表的なWBG材料としてSiC (amorphous)の成膜にチャレンジしSiCのプラズマを伴うアブレーションを確認、薄膜形成の目視での確認まで研究を進めた。このことにより本研究で用いているEUV光が、成膜可能な強度と不純物抑制能力を持つことを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では当該年度では電場を用いたイオン偏向によるデブリ抑制装置を設置する予定であったが、光学配置を利用したPT, TT方式のデブリ抑制が実験的にも計算からも十分有効である事、また実験的にXeイオンの角度分布を求めた結果、光源からの軸に対して60度以上の広がりを持つ事が明らかになったことから、電場によるデブリ抑制方法の有効性が必ずしも高くないとの結論に至った。このことより、研究を前倒しに進める事ができた。Siに関しては膜厚や密度の分析を完了した。また、30年度以降に予定していたSiCの成膜に前倒しで着手し、目視での薄膜形成の確認まで研究を進める事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は29年度で完成させたデブリ抑制システムを用いて、WBG材料などのターゲット材料へのEUV光照射をし、アブレーションによる成膜を中心に研究を遂行する。具体的には得られた薄膜の分析と、従来光との比較である。 得られた薄膜はX線回折や走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、蛍光X線分析により、結晶性や構造、含有元素組成比を評価する。分析方法や分析パラメータは各種材料分析のノウハウを持つ安田と連携を取って決定していく。特にEUV光と従来光では光子エネルギーによるターゲット材料の電離やプラズマ加熱の過程が全く異なる事から、例えば膜表面に付着するドロップレットなどの評価も行う。 プルーム中の粒子のパラメータは一次元放射流体コードで予測し、粒子計測によって求める。更に前年度より共同研究を開始したスイス連邦材料試験研究所で開発中のEUVアブレーションコインシデンス計測法によりSiCのような複合材料をEUV光でアブレーションした際のプルーム中に含まれる元素比などを求めることをチャレンジする。 以上によりEUVアブレーション成膜特有の膜質や最適条件を明らかにし、従来のPLD法と比較することで優位性、課題点を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初計画では電場によるXeイオンの偏向装置を設計、製作する予定であった。しかし上記した通り、光学系を工夫したデブリ抑制方式が当初の期待以上のデブリ抑制能力を発揮したこと、また光源から膨張するXeイオンが60度以上という広い角度分布を持つ事から電場による偏向装置を用いる事をスキップした。これにより電場による偏向装置の設計、製作に計上していた10万円程の残余が出た。その他研究を遂行するにあたる必要物品は全て購入、また出張を行い最終的に113,077円の残余が出た。 残余分の113,077円は使用順の入れ替えではなく、残余となる。今後成膜実験と薄膜分析に軸足を置いていくことから、薄膜表面状態のSEMや顕微鏡画像、各種分析結果の膨大なデータを取り扱う事になるため、新しいコンピュータの購入代金の一部に充てることを計画している。
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