2019 Fiscal Year Research-status Report
マイクロプラズマ遺伝子導入法における周波数の最適化
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17K05731
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
前原 常弘 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (40274302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 雅文 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (30274335)
本村 英樹 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (80332831)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マイクロプラズマ / 遺伝子導入 / 周波数 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)13.56MHz帯:Q値の改善に取り組んだ。しかしながら、導入効率の改善には至らなかった。 2)これらの結果を受け、遺伝子導入技術の応用の1つとして、魚卵への蛍光分子導入を行った。これまでに、沿面放電を利用してスマ魚卵及び稚魚への蛍光分子導入が確認されているが、スマは産卵期が夏に限定され、ほかの季節では実験することができないため、研究室でも飼育が簡単なメダカでも実験が行われている。しかし、メダカでは卵殻が硬いためか、魚体への蛍光導入への蛍光導入は確認されていない。そこで、沿面放電ではなく水中プラズマを用いてメダカ魚卵へプラズマの照射を行い、蛍光分子の導入を目指した。 用いた水中プラズマは、電極上の発生させるタイプではなく、電極間に絶縁板を配し、その絶縁板に貫通孔を設けることで、貫通孔の部位にプラズマを発生させることが大気圧下で可能である。このようなプラズマを断続的に発生させる(Dutyを低くする)ことで、魚卵へのダメージが低下し、蛍光分子の導入が期待できる。実際、300Wでの実験において魚体の一部に確認できた。用いた周波数は13.56MHzである。 3)上記の結果を受け、他の周波数でも同様の形式での水中プラズマ発生の確認が必要となった。1MHz帯域で、まず、電極上にプラズマを発生させる装置を完成させ、試運転を行った。13.56MHzよりは、プラズマ発生が可能となる水の導電率は限られるが、十分広い範囲で、プラズマ発生が可能となることを示している。入力電力によるOHの分子スペクトルの変化も見られ(13.56MHzでは見られていない)、異なる性質を持つプラズマが発生していることが示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度までにほぼ順調に進展し、以下の研究成果をあげている。 1)1MHzおよび500kHz帯での回路の検討と試作:リッツ線(細いエナメル線を束ねたもの)を用い、1MHz帯ではQが60を超える回路を制作することができた。2)1MHzおよび500kHz帯でのマイクロプラズマの発生を得た。3)3つの周波数帯域でのプラズマによる遺伝子導入:低い周波数(1MHzおよび500kHz)では、プラズマの照射時間が長いほど、導入効率が高くなっており、一方、高い周波数(13.56MHz)では、照射時間が短いほど導入効率が高くなっていることが明らかとなった。4)プラズマの照射回数も重要なパラメータであることが明らかとなった。 それを受け、令和元年度は 1)13.56MHz帯:Q値の改善に取り組んだ。しかしながら、導入効率の改善には至らなかった。2)水中プラズマを用いてメダカ魚卵への蛍光分子導入を行った。FITC-dextran溶液(10mg/ml)で装置内部を満たし、プラズマを発生させ、ターゲットにプラズマを照射する。 蛍光分子の導入は、300Wでの実験において魚体の一部に確認できた。また、小さな分子量の蛍光分子を用いた際に、プラズマを照射しなくても卵膜内に蛍光が発生することが確認された。250kDではプラズマ照射のサンプルのみに蛍光が発生していたため、卵膜透過においては250kD以上を用いることが適切である。ただし、プラズマを照射しない場合、魚体への蛍光導入は確認できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね、計画通りに研究は進んでいる。プラズマ遺伝子導入の応用として、水中プラズマを利用した魚卵への蛍光分子導入が行われた。令和2年度は ・生存率、蛍光導入率の変化を検討する。 ・食塩を電解質として用いてきたが、塩分濃度のほか、生育により影響の小さな電解質の利用を検討する必要がある。 ・入力電力: 電解質濃度に応じて入力可能な電力の下限が変化する。本研究で用いた0.5%食塩水では、200W程度からしか安定したプラズマを発生させることができなかった。そのため、上記電解質の検討に加え、よりダメージの小さな電力においての実験をしていく必要がある。 ・周波数の変更:1MHzでは異なる性質の水中プラズマの発生の可能性があり、電極上から離れた位置でのプラズマ発生を試みる。
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Causes of Carryover |
概ね、計画通りに研究は進んでいるが、水中プラズマを利用した魚卵への蛍光分子導入のパラメータ依存性に全く手を付けられなかった。また、新型コロナによる出張自粛の影響もある。
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