2019 Fiscal Year Research-status Report
大規模複雑電子構造系の遷移状態・電子励起状態計算法の確立と生体反応への応用
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17K05738
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 正人 北海道大学, 理学研究院, 講師 (40514469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤間 知子 北海道大学, 理学研究院, 特別研究員(RPD) (60580149)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 理論化学 / 量子化学 / 静的電子相関 / 大規模系計算 / エネルギー勾配法 / 複雑電子状態系 / 遷移状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大規模計算法の分割統治(DC)法と複雑系電子状態計算法のHartree-Fock-Bogoliubov (HFB)法を土台として、大規模で複雑な電子構造を持つ系の遷移状態探索や電子励起状態を取り扱うための量子化学理論の確立を目的としている。 本年度は、DC-SCF計算においてエネルギー勾配も考慮したバッファ領域の自動決定法を開発した。具体的には、DC-SCF勾配として、申請者らが2011年に提案した表現を採用し、Schwarzの不等式とThompson-Ochsenfeldの不等式を用いてエネルギー勾配の上限を求める式を考案した。また、超大規模計算を可能とするDC-DFTB-MDプログラムと反応経路自動探索プログラムGRRMを接続し、大規模な生体分子反応の反応過程と遷移状態計算を行うことを可能とした。現在、このプログラムを用いてシチジンデアミナーゼにおけるプロトン移動過程とその遷移状態計算に取り組んでいる。 また、分担研究者の産休のため遅れていた電子励起状態を取り扱うための時間依存HFB (TD-HFB)法を定式化し、実時間発展に基づくRT-TD-HFB計算プログラムを開発した。本プログラムをまず制限HF解に対して適用したところ、通常のTD-HF計算と同じ吸収スペクトルを得ることができた。しかし、p-ベンザインのような開殻一重項系に適用したところ、誘起双極子モーメントがすぐに発散してしまう問題があることがわかった。現在、各時刻における密度行列をスケーリングすることにより、この問題を回避する方法の開発に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
産休のため開発が遅くなっていた時間依存理論とその計算プログラムのプロトタイプが本年度完成し、これまでの後れをおよそ取り戻すことができた。分割統治法に関しては、生体反応における遷移状態計算への応用も進んでおり、当初計画にほぼ沿うような形で進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
時間依存理論に基づく励起状態計算について、誘起双極子モーメントが発散してしまう問題については、当面は密度行列のスケーリングにより回避する予定である。また、現在は時間発展をRunge-Kutta法で行っているが、ノルムの保存性向上と計算コスト削減を図るために、研究分担者の赤間が開発してきた3項間漸化式法に基づく時間発展も実装する予定である。また、超大規模系を取り扱う方法として、今年度はDFTB法との組み合わせを考えたが、利用できるパラメータが限定的であるという欠点がある。そこで、計算精度はよく考慮する必要があるが、ほぼすべての元素に対してパラメータ化されているxTBプログラムとDC法、GRRMプログラムを接続することも検討したい。
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Causes of Carryover |
年度末に研究代表者・分担者ともに発表・情報収集のための学会出張を複数計画していたが、コロナウイルス感染拡大の影響で中止となった影響により、執行額が大幅に減少した。収束後に学会出張を行うほか、コロナウイルスの影響で必要となったリモートワークで本課題の遂行に必要な計算・ディスカッションを行うための機材購入にも充当することを計画している。また、論文出版の費用としても使用する予定である。
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Research Products
(9 results)