2020 Fiscal Year Annual Research Report
Structural Analysis on Short-Lived Triplet Pairs Generated by Singlet Fission
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17K05742
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
矢後 友暁 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (30451735)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 三重項対 / 遅延蛍光 / 磁場効果 / 有機結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
シングレットフィッション(励起子分裂)は、有機デバイスの高効率化に役立つと期待され活発に研究が行われている。 励起子分裂を最適化するためには、その機構を明らかにすることが重要である。しかし、励起子分裂を効率よく起こす材料はいまだ少なくその機構は明らかにされていない。本研究では、励起子分裂の機構を明らかにする第一歩として、励起子分裂過程において生成する二つの励起状態がカップルした状態を観測し特定することを目的とし研究を行った。 研究手法としては、有機結晶での遅延蛍光に対する磁場効果測定を用いた。遅延蛍光は、一度解離した励起子が再び融合したのちに観測される蛍光である。遅延蛍光の強度や時間変化は励起子のダイナミクスや構造に関する情報を含んでいる。遅延蛍光に対する磁場効果測定から以下のことがわかった。 (1)高磁場領域におけるレベルクロス機構による磁場効果の観測:交換相互作用でカップルした二つの三重項対では、スピン状態間のエネルギーが交換相互作用によりエネルギー的に解離している。しかし、交換相互作用の大きさに相当する磁場を印加することにより、一部のスピン状態はエネルギー的に縮重する。このとき、遅延蛍光の強度が減少するという磁場効果が観測される。このタイプの磁場効果の観測から、三重項対の交換相互作用の大きさを決定した。さらに、磁場効果の角度依存性の観測から、交換相互作用によりカップルした三重項対の構造を決定した。 (2)低磁場効果の機構解明:遅延蛍光の磁場効果においては、低磁場領域において高磁場での磁場効果を反対向きの磁場効果が観測されることは知られていたがその詳細は不明であった。本研究では、理論的な考察により、低磁場領域の磁場効果が3状態の混合により説明できることを初めて明らかにした。また、低磁場領域の磁場効果の解析から、三重項対の構造を決定できることを明らかにした。
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Research Products
(1 results)