2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidate the pressure effects on molecular properties for theoretical designing of piezo-responsive molecules
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17K05749
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福田 良一 京都大学, 実験と理論計算科学のインタープレイによる触媒・電池の元素戦略研究拠点ユニット, 特定准教授 (40397592)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 計算化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)電子状態の遷移に伴う構造及び物性の変化と圧力‐体積効果 ヘテロ元素を含む共役環状化合物は、環状骨格に非局在化したπ電子と、ヘテロ原子に局在化した非結合性(non-bonding: n)電子が価電子領域に存在する。複数のヘテロ元素を含む場合、低エネルギーの電子状態としてnπ*励起とππ*励起状態が、非常に狭いエネルギー間隔で存在(擬縮退)して複雑な物性を示すことがある。擬縮退系で見られる電子状態の結合に起因する分子構造の変化は、擬ヤーンテラー効果あるいは2次ヤーンテラー効果と呼ばれる。この、擬ヤーンテラー効果と分子の物性の相関及び、体積変化と圧力効果について調べた。特に典型的な系であったパラベンゾキノンについて、量子化学計算により現象の詳細な解明を行った。 パラベンゾキノンの3重項状態には様々な電子状態があり得るが、nπ*励起は非対称なC=O結合を取り、ππ*励起では非対称なC=C結合を取るように構造緩和(擬ヤーンテラー効果)する事を明らかにした。nπ*励起の特徴的な対称性低下の原因を調べ、電子状態間のエネルギー差が非常に小さいために電子状態間の結合が大きくなる事が主要な寄与である事を明らかにした。パラベンゾキノンの基底状態はD2h対称性を有し、電気及び磁気双極子モーメントを持たないが、3重項のnπ*状態は、擬ヤーンテラー効果により電気双極子モーメントを持つ。また2つのC=O基は非等価であり、磁気的な分極も引き起こす事が分かった。計算によれば、高圧力をかけることにより擬ヤーンテラー歪が大きくなることが分かった。光と圧力という外部刺激により、電気及び磁気双極子を誘起できる分子系は新たな分子素子として利用できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に計画していたように、圧力応答物性と構造や電子状態の相関に関する知見を得ている。その中でも、圧力応答と擬ヤーンテラー効果を相関させることで、当初の計画では予想していなかった分子の圧力応答の可能性を見出すことができた。研究対象が計画よりもやや狭まったが、研究成果も公表も進んでおり、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
圧力応答と擬ヤーンテラー効果の相関に関してより多くの知見を得る。そのために、本年度のパラベンゾキノンについて行った研究手法を拡大延長して、できるだけ多くの分子種に対して適用することにより、系統的な計算結果を得る。得られた結果を解析して分子構造、圧力応答物性、電子状態といったパラメータの相関を調べる。特に分子の内部電場(電気双極子)と内部磁場(スピン磁気モーメント)を外部刺激から制御するための基礎的な知見が得られないか試みる。
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Causes of Carryover |
当初の計画では予想していなかった、新た圧力応答メカニズムを提案できる可能性のある結果を本年度に得た。新しいメカニズムの解明を進める必要上、研究対象を変更したため次年度使用額が生じた。加えて、当初の計画を一年延長することで、より大きな成果が上げられると判断した。助成金の使用については、支出時期が後ろ倒しになったが、支出費目の計画等に大きな変更はない。
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Research Products
(10 results)