2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of organic conductors possessing diode properties
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17K05751
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
圷 広樹 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (80316033)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機導体 / 安定有機ラジカル / 極性結晶 / ダイオード特性 / BEDT-TTF / 伝導性 / 磁性 / 分極 |
Outline of Annual Research Achievements |
まずは伝導度測定装置の開発・販売を行っている扶桑製作所に、2014年3月に退職された日本大学の小林昭子教授(現 東京大学名誉教授)、小林速男客員教授(現 分子科学研究所名誉教授)から頂いた伝導度測定装置本体HUSO-HECS994C1を送り、他の部分(温度コントロールやコンピュータ制御部など)の作成をお願いし、8月に納入された。2018年度の予算で圧力セル用のインサートを購入し、静水圧下での伝導度測定ができるようにする。また、Cyclic Voltammetry測定やIV特性の測定に用いるKeithley 2450-ECを購入した。これらが来るまでの間は、新しい安定有機ラジカルアニオンの合成を行った。まず、PROXYL-NH2 (3-Amino-2,2,5,5-tetramethylpyrrolidin-1-oxyl)の合成を既知の方法に従って合成し、スルホ酢酸HOOC-CH2-SO3Hと脱水縮合し、PROXYL-NHCOCH2SO3–アニオンをPPh4+との塩として得た。しかし、TTFやBEDT-TTFと組み合わせる電解法を行い有機導体の作成を試みたが、今の所粉末でしか得ることができていない。一方、PO-CONHCH(cyc-C3H5)SO3-アニオンの作成にも成功し、これはBEDT-TTF塩を与えたが、アニオン層は分極していなかった。PO-CONH-m-C5H4NCH3カチオンの合成にも成功し、Ni(dmit)2との塩を得た。カチオン層はType IIIの分極していた。新規合成としては他に、ラジカルなどを含まない普通の有機アニオンを用いた有機導体の開発を行い、これらの中からすべてのアニオンの分極が伝導層と平行ですべて同じ方向を向いた、新しい分極構造を有する極性結晶を開発することができた。ただ、これらは反転双晶であったため、今後単結晶の作成を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、頂いた伝導度装置本体は1990年代に作られた古いものだったため、扶桑製作所で今販売されている最新のコンピュータ制御装置の一部が合わず、一部古いものを使用し、一部は新しいという構成になった。このため、8月に納入されたが、その後様々なトラブルが続いた。また、このトラブルの一因となる本体の故障も見つかり、修理をしてもらうために、本体が扶桑製作所に戻ったりした。このため、本格稼働は年度末になってしまった。これらの対応に時間が取られたのは研究の進捗が遅くなった一因である。また、PROXYL-NHCOCH2SO3-の合成に手間取ってしまったのも一因である。ただPROXYL-NH2の合成法は確立したため、今後様々な誘導体アニオン、カチオンの合成に使える。また、このアニオンには不斉炭素がありラセミ体である。カチオンにキラルな分子を用いた再結晶、ジアステレオマー塩法で光学分割ができる可能性があり、光学分割後BEDT-TTFなどとの塩が得られる可能性が期待できる。キラルな結晶には原理的に対称中心が存在しないため、極性結晶になる。その分極構造がどうなるのか興味深い。この合成や電解に時間が取られてしまったため、本科研費で購入したKeithley 2450-ECにより極性結晶α-(BEDT-TTF)2(PO-CON(CH3)CH2SO3).3H2O(1)の起電力測定を行う予定だったが、まだ手を付けていない。2018年度に行う予定である。また、自己ドープ塩κ-β´´-(BEDT-TTF)2(PO-CONHC2H4SO3)の低温X線構造解析を行い、ESRピークの角度依存がおよそ50 Kと200 Kで変化する理由を明らかにする研究も行なったが、反射強度を積分にて求める時のBOX SIZEを変化させると結果が有意に変わるという不思議なことが起こり、解析に1ヶ月以上時間を取られてしまったのも一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは一度整流性を示した極性結晶1の起電力測定や他の電気的測定により、整流性の再現を目指すことがもっとも重要であり、2018年度こそはそれを中心に行う予定である。低温や高圧で行えば再現するかもしれないので、2018年度の予算で、圧力セル用のインサートを購入し、静水圧下での伝導度測定ができるようにする。有機ラジカルなどを含まない普通の有機アニオンから今までに無いタイプの極性結晶の塩が得られたことから、2018年度はもっとシンプルでかつ分極の大きい普通の有機アニオンを用いてBEDT-TTFなどのドナーと組み合わせた有機導体を開発する。また、30年度は有機導体の構成成分としてドナー、BOの合成を計画していた。しかし、整流性実験が遅れてしまったため、また、普通の有機アニオンからも極性結晶が得られたため、BOの合成は2019年度に回すことに予定を変更する。安定有機ラジカルを含む有機導体の開発では、PO-CONHCH(iso-C4H9)SO3-のラセミ体の開発に成功しており、これらラセミ体の光学分割をジアステレオマー塩法によって行う。キラルなカチオンの購入(光学活性アミンを酸性条件下-NH3+カチオンとして使用する)または合成(光学活性アミンにメチル基を導入し、-N(CH3)3+カチオンにする)する。安定有機ラジカルカチオンおよびそのM(dmit)2(M = Ni, Pd, Pt, etc.)塩の合成では、PROXYL-NH2の合成法が確立したため、このアミノ基をトリメチル化したカチオン、PROXYL-N(CH3)3+を合成し、M(dmit)2塩を開発する予定だが、1の機能開発に今年度は集中するため、来年度になるかもしれない。なお、PROXYL-N(CH3)3+も不斉炭素を有するため、ジアステレオマー塩法による光学分割も最終年度には行いたい。
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Research Products
(30 results)