2017 Fiscal Year Research-status Report
貴金属ナノクラスター触媒の示すソフトルイス酸性に関する構造活性相関の理論的研究
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17K05752
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
奥村 光隆 大阪大学, 理学研究科, 教授 (40356712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ソフトルイス酸性 / ナノクラスター触媒 / DFT |
Outline of Annual Research Achievements |
均一系触媒において、金やパラジウムなどの貴金属触媒が、ソフトルイス酸的機能を発現するとともに、様々な触媒反応に応用されている。これらは主に貴金属のカチオン種と不飽和炭化水素との相互作用に起因するものである。ところが近年、酸化還元反応が得意と考えられた貴金属ナノ粒子触媒においても類似する触媒機能が報告されるようになってきた。そこで、このようなソフトルイス酸性が貴金属ナノ粒子担持触媒のどのような構造や電子状態に関係して発現するかを、第一原理計算による反応機構解明と、理論計算から得られる物性値との相関関係をもとに検討し、触媒機能の原理解明と触媒設計の作業指針を確立すること目指して研究を行っている。本年度は、Pdnx、Aunxクラスター(x=0,+1,n=1,…13)に対する吸着状態を第一原理計算で検討を行ってきた。この計算により、担体効果を含まないアリルアルコールなどとの相互作用を検討したところ、吸着エネルギーと脱離エネルギーにクラスターに内包された原子数でクラスターの電荷を除した場合に、孤立クラスターのサイズ変化が大きくなるにつれて基質と生成物の安定化エネルギーが単調に減少していくとが明らかとなった。また、不飽和共役炭化水素の異性化反応の途中には、六員環構造を有する中間体が得られるが、この中間状態の安定性が遷移状態の高さと相関しており、反応活性に著しく影響を与えることが明らかとなった。さらに、Pdクラスターでは、中性状態のクラスターではこの中間体が准安定構造とはならずに遷移状態となることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検討している反応は少ないが、それらの反応で重要となる要素が明らかとなってきている。また、クラスターを担持した酸化物上でのソフトルイス酸性の発現は、ヘテロ接合が重要となることを示唆する結果が示されてきているとともに、Pdクラスター担持触媒が均一系Pd触媒に比べて活性が相対的に低い原因を示す短所を得られつつある。さらに、アリルアルコールの異性化反応では、アルコールのOH基からのだつプロトン反応に酸化物担体の内部での金属欠損がもととなる酸化物表面で塩基点となる酸素原子の存在が重要であるとの結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
均一系触媒では正の形式電荷を持つPdやAu原子の金属錯体が用いられる。しかし、通常のナノクラスター担持触媒では、クラスター内のほとんどの原子は0価の原子で有り、正の形式電荷は有していない。しかし担体とクラスターの接合により界面にソフトルイス酸性を発現する金属クラスター界面が生成されると計算から示唆されているので、酸化物担体の中で高活性な触媒担体となるTiO2やNiOと低い活性な担体となるZrO2のような差異が、どのような接合界面と電子状態の違いから創製されるかを検討することにする。
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Research Products
(10 results)