2018 Fiscal Year Research-status Report
Rapid freezing quench and ESR studies of biological molecules in transient states
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17K05758
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
松岡 秀人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任准教授 (90414002)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電子スピン共鳴 / 距離測定 / 生体超分子 / 構造生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体分子の構造研究は、生物科学や物性科学など幅広い分野で欠かすことのできない研究課題となっており、特に生体機能を示す常温での構造とダイナミクスを明らかにすることは、特に重要となってきている。本研究の目的は、1)常温での生体分子の構造、および生体機能の発現過程で時々刻々と変化する中間構造を、その状態を保持したまま急速に凍結する手法を確立し、2)それによって捕捉・凍結された生体超分子の過渡的構造を電子スピン共鳴(ESR)法によって分子レベルで明らかにすることである。昨年度に引き続き、構造変化を示す生体膜イオンチャンネルを対象とした実験を継続した。急速凍結システムならびに凍結後サンプル処理方法の改良を行った結果、より精度の高い時間分解能を得ることが可能となり、リガンドとの反応に伴う構造変化の時定数を決定した。 また、ESRによる構造変化観測のおいて不可欠な距離測定法の理論的改良も進めてきた。具体的には、生体系に広く含まれる高スピン鉄イオンを含む化合物を対象に、これまであまり考慮されてこなかった「高磁場近似の破綻」について、実験と理論の両面から考察し、新たな解析方法を確立した。一方で、生体系で構造ダイナミクスを示す典型例として、リボスイッチを対象とした実験も行ってきた。リボスイッチは、遺伝子発現において低分子化合物が特異的に結合することで構造変化を示し、影響を受けるメッセンジャーRNAである。ウェットプロセスで、かつ高効率に、電子スピンをRNA内の特異なサイトにラベル化する手法を確立し、構造変化前後の距離測定に成功した。ESR法によって、RNAの構造変化を観測した例は、これまでなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
安定した急速凍結システムの改良が進んだ。また、構造変化の観測に不可欠なESRによる距離測定について、理論と実験の改良を行うことができ、様々な生体系に適用できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も現在の研究を継続していく。一方で、得られた実験結果と、実際に生体内で起こっている構造ダイナミクスを伴う反応について、どのように統一的解釈を図っていくか、理論的考察も併せて行っていく。
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Causes of Carryover |
ESR装置の主要部であるマイクロ波ブリッジ、共振器、ならびに磁場用電源が故障し、購入予定部品の選定に変更が生じたため。
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Research Products
(14 results)