2018 Fiscal Year Research-status Report
エキシマー中の非局在励起電子の移動をともなう分子振動の超高速赤外分光
Project/Area Number |
17K05761
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
坂本 章 青山学院大学, 理工学部, 教授 (90262146)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エキシマー / 共役二量体分子 / 時間分解赤外分光 / 電子-分子振動相互作用 / 光誘起準安定状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,電子励起された共役二量体分子,すなわち,エキシマーにおいて,2つの共役分子部に非局在化した励起電子と分子振動の相互作用を解明することを目的とする.具体的には,種々の共役分子とその二量体分子のフェムト秒時間分解赤外吸収スペクトルを測定し,電子励起された共役二量体分子において励起電子が分子振動を介して2つの共役分子部の間でやり取りされる様子を直接的に観測することを目的とする.平成30年度には,主に,以下の2つの研究を行った. (1) 超高速赤外分光のためのモーター一体型赤外透過液体回転セルの製作 少量の試料溶液に対して,光損傷をできるだけ避けながら精密なポンプ・プローブ赤外分光測定を行うために,プローブ光が試料部を透過できるモーター一体型赤外透過回転セルを製作した.赤外透過液体セルには,中心部分に円形状の窪み(φ13.0 mm,深さ0.2 mm)をつけたBaF2窓板(外径φ30 mm,厚さ3 mm)と同じ外径のもう1枚の平らなBaF2窓板を組み合わせたものを用いた.この赤外透過液体セルを専用設計のアダプターを介して,高精度中空モーター(回転数:100~1500 rpm)に取り付けた. (2) 光応答性金属錯体の光誘起準安定状態と超高速ダイナミクスの解明 光照射によって分極やスピン,プロトン移動などを制御できる光応答性金属錯体[Co単核錯体[Co(rac-cth)(phendiox)](ClO4)やFe二価錯体[Fe(HL-Cl)2](AsF6)2など]の光誘起準安定状態とその生成ダイナミクスを分析した.極低温(~7 K)光照射赤外分光測定では,室温では容易に失活する準安定状態の熱戻りを抑制して定常的な振動分光測定を実現し,時間分解赤外分光測定では,光照射直後の赤外スペクトルを数ピコ秒の時間分解能で測定し,準安定状態に至るダイナミクスを追跡した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「5. 研究実績の概要」に記述したように,平成30年度には,本研究の目的と密接に関連する2つの研究を実施した.本研究はおおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度には,以下のような研究を実施する予定である. (1) ベンゼン二量体分子のフェムト秒時間分解赤外吸収測定と励起電子-分子振動相互作用の解析 (2) 種々の多環芳香族分子およびその橋架け二量体のフェムト秒時間分解赤外吸収測定と解析 (3) キンクチオフェンとその橋架け二量体および自己配列したポリ(3-アルキルチオフェン)のフェムト秒時間分解赤外吸収測定と解析
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Causes of Carryover |
理由:フェムト秒時間分解赤外マルチチャンネル分光システムに使用しているMCTアレイ検出器のいくつかの素子に不具合がある可能性があり,その不具合の検証と修理にかかる費用と期間の見積りを平成29年度に引き続き行っていた.しかし,当該機器は,本研究にとっても必須の機器であり使用頻度も高く,平成30年度内に,これらの確定と修理の検討を行うことができなかった.そこで,研究費を次年度に繰越して,問題に対応することを計画した. 使用計画:早急に不具合の検証と修理にかかる費用と期間の見積りを確定する予定である.
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Research Products
(15 results)