2017 Fiscal Year Research-status Report
光ピンセット法を利用したブラウン運動の高速解析による水・エタノール混合状態の解明
Project/Area Number |
17K05765
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
十代 健 日本大学, 文理学部, 教授 (60317302)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 一輝 日本大学, 文理学部, 助手 (10779961)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ブラウン運動 / 光ピンセット |
Outline of Annual Research Achievements |
水とエタノール混合溶液においてブラウン運動を光学顕微鏡で観察する実験を継続した。ポリスチレン粒子のブラウン運動から粘性率を計算するのだが、粘性率は温度に大きく依存するため温度をしっかりと制御することが実験的に重要である。チラーからの温度制御した冷却水をサンプルセルに流すことで精密に温度を変えながら実験を行った。その結果、バルク粘性率と比べ、ブラウン運動で求めた粘性率が統計的に有意に小さいことが判明した。アルコール濃度を変化させて実験するとバルク粘性率とブラウン運動で差が生じる濃度領域は、アルコールが低濃度の範囲であり、低濃度領域でクラスターなどの生成が予測される。 アルコール水溶液でブラウン運動が激しくなる理由を考察することが非常に困難である。ポリスチレン粒子の周りに強固な水和層が作成された場合は、逆にブラウン運動は小さくなるはずであり、実験結果を説明できない。ポリスチレン粒子の近傍のみ局所的にアルコール濃度が違うとしても、アルコール濃度依存性の実験結果から否定された。分子が表面をスリップする機構では、十分にサイズの大きなポリスチレン粒子を使用しており、唯一残った可能性は、局所的な粘性率の差により回転運動と並進運動のカップリングしている考えである。粘性率差が生み出す挙動を流体力学とランジュバン方程式から定式化した。求めたブラウン運動における易動度の数式は、温度や粒径といったパラメータを含まず、ブラウン運動における粘性率の温度変化や粒径依存の実験結果を支持するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学顕微鏡でのブラウン運動の観測と並行して、光ピンセット法のセットアップ構築を開始した。赤外レーザー光を100倍の顕微鏡用対物レンズで集光して、水中に懸濁させた直径2マイクロメートルのシリカ微粒子に照射することで、電場勾配でトラップすることに成功した。本研究で推進する光ピンセット法の光学システムを構築完成できたといえる。 トラップするレーザー光照射時と、非照射時のブラウン運動をビデオ撮影を行い、シリカ微粒子の易動度を計算した。現時点で判明した問題点として、トラップ位置が壁面近くであること、温度制御が、まだ十分でなく、通常の光学顕微鏡での観測と同レベルでの実験データ蓄積まで到達していないことが挙げられる。しかし、基本的な手法は確立できているため、実験条件の最適化が残るだけである。
|
Strategy for Future Research Activity |
ここまで進展した研究から、2つの方向性が明確となった。 1つめは、研究課題として当初から考えていた高速解析である。光トラップすることで、単一の微粒子に着目し、そのブラウン運動を高速で分析しようというものである。検出器が通常のビデオカメラであるため、達成していないが、4分割フォトダイオードを導入することで、実現可能になると考えられる。現在、増幅器等の必要なスペックを算定中である。 もう1つの課題は、回転運動の観測である。水とエタノール混合システムにおいて異常なブラウン運動が観測された理由を、並進運動と回転運動のカップリングだと考察している。この考察を証明するには、回転のブラウン運動の観測がもっとも直接的であり、現在、ポリスチレン粒子に部分的に白金金属をメッキするなど回転ブラウン運動の観測を開始した。
|