2017 Fiscal Year Research-status Report
非共有結合性相互作用を用いた有機ドナー・アクセプター類の創製
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17K05769
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
武田 貴志 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80625038)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機電子アクセプター / 水素結合 / 酸化還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では有機電子ドナー・アクセプターの電子状態調性の新しい手法として非共有結合性相互作用を用いることを提案し、その有効性を検証することを目的としている。本年度はよく定義された配置を有する水素結合を導入したアントラキノンを系統的に合成し、非共有結合性相互作用である水素結合がアントラキノンの電子状態を調性できるか検討を行った。 アントラキノンの1,4,5,8-位にアミノ基を導入することで強い分子内水素結合が生じると予想される。溶液中においても分子内水素結合を保持することを狙い、嵩高いアリールスルホニル基をアミノ基に連結した化合物を設計した。設計した化合物を合成し、その酸化還元特性をサイクリックボルタンメトリー法によって評価したところ、合成した化合物はアントラキノンと比較して明瞭な電子受容性の向上が認められた。これは電子供与性置換基のアミノ基の誘起効果から予想される結果(電子受容性の低下)とは異なる結果であり、水素結合がアントラキノンの電子状態に大きく影響を与えたことが示された。このことはアミノ基をN-メチル化し、水素結合の形成を不可能とした化合物との比較からも明瞭に確かめることができた。一方で、アミノ基上に嵩高い置換基がない場合は、水素結合性相互作用に基づく酸化還元電位の変調は認められなかった。このことは溶液中での水素結合部位の構造の固定が、水素結合相互作用による電子状態の調性に必須であることを示す結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画で提案した、有機電子ドナー・アクセプターの電子状態調性を非共有結合性相互作用によって実現することを実証することができた。その実現に必要な条件についても、本年度行った検討により具体的なものとすることができた。合成した化合物のバルク物性についても興味深い現象を見出している。これらの結果より、平成29年度の計画を十分達成しただけではなく、平成30・31年度に実施予定であった計画を一部先行達成したと判断することができる。上記の理由より本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られた知見をもとに非共有結合性相互作用を組み込んだ新規電子ドナー・アクセプター類の開発を推進する。これと並行して、非共有結合性相互作用の構造・種類と電子調性の度合の相関について実験的な検討を実施する。合成した化合物のバルク物性も詳細に検討を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度の購入予定としていた有機合成用物品が学内プロジェクト予算で別途充当されることとなり、物品費が大幅に減少した。このため次年度使用額が生じた。次年度使用額については新規有機ドナー・アクセプター類の合成に必要な試薬・溶媒購入経費として使用する計画である。
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Research Products
(10 results)