2017 Fiscal Year Research-status Report
典型元素を含む生体反応中間体を触媒として活用した合成反応の開拓
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17K05774
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐瀬 祥平 東京工業大学, 理学院, 助教 (90515165)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セレン / ヨウ素 / 有機触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では、独自に開発したメタテルフェニル骨格を基盤としたデンドリマー型キャビティ型置換基を活用し、高反応性化学種であるヨウ化セレネニルの反応性について検討してきた。Se-I官能基周辺の立体環境はヨウ化セレネニルの反応性に大きな影響を及ぼすと考えられ、キャビティサイズによって周辺の立体環境をチューニングできると考えられる。そこで、当研究室で既に見出している鈴木-宮浦カップリングを用いた骨格構築法を活用することで、キャビティサイズを拡大したヨウ化セレネニルを合成・単離した。ヨウ化セレネニルの反応性を検討したところ、今回開発した大きなキャビティを有するヨウ化セレネニルの方が、従来のものに比べ求核攻撃を受けやすいことが明らかとなった。その一方で、Se-I官能基の極大吸収波長は、ほぼ同じであったことから、電子状態を変えることなく立体環境のみが変化していることが示唆される。 次に、1,5-ジエンのタンデム環化反応について検討した。1,5-ジエンとしてはゲラニオールとフェノールから誘導したフェノール性OHを求核部位として有する化合物Aを用いた。キャビティ型置換基Bpq基を有するヨウ化セレネニルBpqSeIと1,5-ジエンAを反応させると、タンデム環化生成物である三環性化合物Bが得られたものの収率は27%と低かった。そこで種々検討を行ったところ、N-ヨードスクシンイミド(NIS)を添加して反応を行うとBの収率が78%まで向上することがわかった。一方、BpqSeIの代わりに塩化セレネニルPhSeClを用いてAとの反応を行うと、興味深いことに二環性化合物が主生成物として得られ、三環性化合物は少量しか得られなかった。この反応性の違いは、Bpq基がかさ高いことに起因すると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新規なキャビティ型置換基を有するヨウ化セレネニルの開発とヨウ化セレネニルを活性化剤とした1,5-ジエンのタンデム環化反応について検討した。前者では、従来よりキャビティサイズの大きなヨウ化セレネニルを合成・単離することに成功した。後者では、分子内にOH求核部位を有する基質で、目的のタンデム環化が進行することを見出した。いずれも当初の計画に近い成果が得られており、概ね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、従来よりもキャビティサイズを拡大したヨウ化セレネニルを開発するとともに、OH基を分子内求核部位として有する1,5-ジエンのダンデム環化による三環性化合物の合成を達成した。 新規なヨウ化セレネニル触媒の開発については、ライブラリの拡大を主眼に置いて検討を行う。これまでに立体環境の異なるヨウ化セレネニルの合成は達成したので、次は電子的性質の異なるヨウ化セレネニルの開発を行っていく予定である。すなわち、Se-I官能基が結合した芳香環に電子供与・吸引基を配置した種々のヨウ化セレネニルを合成するする。それぞれについてキャビティサイズの異なる化合物を合成し、立体環境、電子的性質の異なるヨウ化セレネニルライブラリを構築することを目的として検討を行う。さらに、今回見出した開発した種々のヨウ化セレネニルを1,5-ジエンのダンデム環化に適用し、ヨウ化セレネニルの立体・電子的特性が反応に及ぼす影響について調査していく予定である。 1,5-ジエンのダンデム環化については、従来用いることが困難であった窒素求核部位を有する1,5-ジエンについて検討を行う。また、Lewis酸性を有するN-ヨードスクシンイミドがヨウ化セレネニルの活性化剤として有効であることを見出したが、適切なLewis塩基によっても活性化が可能であると期待されるので、活性化剤の探索についても検討する予定である。 さらに、触媒反応の開発についても検討を行う。まず、今回達成した1,5-ジエンのタンデム環化により生成した三環性化合物をモデル基質として、セレンーヨウ素間の親和性を活用した脱セレン化過程が進行するかについて化学量論反応により検討を行い、そこで得られた知見を踏まえて反応の触媒化へと展開する予定である。
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Causes of Carryover |
ガラス器具・試薬などが当初予定したよりも安価に購入できたため次年度使用額が生じた。次年度は、実験環境をより充実させるために新規に真空ライン、ガラス器具を導入するために使用する。
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Research Products
(2 results)