2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05777
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前多 肇 金沢大学, 物質化学系, 教授 (40295720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千木 昌人 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90135046)
古山 渓行 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (30584528) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ピレン / ピレノファン / ビフェニレン / シリルエチニル基 / 蛍光 / エキシマー / エキシプレックス / 光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
強発光性スイッチ材料の開発を目的として研究を行い、以下の知見を得た。 メチレン鎖で架橋した[9.9](2,7)ピレノファンの簡便な合成法を開発した。その化合物は、ピレンを分子内に2枚持つにもかかわらず、蛍光スペクトルではピレンのモノマー発光のみを示した。X線結晶構造解析の結果、環内にクロロホルムを含んでいることが分かり、ホスト分子として機能することが示唆された。また、テトラシアノエチレンと選択的に包接錯体を形成し、ジクロロメタンに不溶な固体として沈殿することも見出した。 2枚の1-エチニルピレンをビフェニレンの1,8位に導入した化合物の蛍光スペクトルを低濃度条件下で測定したところ、502-506nmを発光極大とする分子内エキシマー発光を示した。これは、1-エチニルピレンの分子間エキシマー発光(505nm)とほぼ同じ波長であることから、ピレンが分子内エキシマー発光を示す最適距離が実現できたものと考えられる。また、そのピレン環上の6位にシリルエチニル基を導入することにより、分子内エキシマー発光をさらに長波長化(518nm)できることも明らかにした。 ピレンと電子不足アルケンをオリゴエチレングリコール鎖で連結した化合物のジクロロメタン:アセトニトリル=1:1溶液に過塩素酸バリウムまたは過塩素酸リチウムを加えたところ、分子内エキシプレックス発光の強度が減少し、等発光点を示しながらピレンのモノマー発光が増大した。また、その化合物のベンゼン溶液に光照射したところ、分子内光環化付加体が位置および立体選択的に生成することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究において、オリゴエチレングリコール鎖で架橋された(1,6)ピレノファンおよびピレン-アルケン連結型分子は、蛍光スペクトルにおいてピレンのモノマー発光、分子内エキシマー発光、および分子内エキシプレックス発光を示し、カチオンを添加することでその比(蛍光色)が制御可能であることを明らかにした。すなわち、カチオン認識型スイッチ材料が設計できたことになる。また、1-ビニルピレンの分子内光二量化反応を用いることにより、光(外部刺激)応答型スイッチ材料が設計できることも明らかにした。さらに、ピレンの分子内エキシマー発光の最適距離を実現し、その長波長化にも成功した。以上の結果、達成度としては、おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、極めて強い発光を示すスイッチ分子を提案・設計・合成し、次世代の蛍光材料開発を目指した基礎研究を行う。例えば、可逆的光反応系を利用する蛍光スイッチ材料の開発を進めるため、分子内光環化付加反応におけるカチオンの添加効果を調べる。また、蛍光のさらなる長波長化を目的とし、分子内エキシマーおよびエキシプレックス発光における芳香環同士の距離の効果と共役系が拡張するような置換基の導入を行う。また、求核剤認識型スイッチ材料や積層構造の変換に基づく強発光性スイッチ材料の開発にも着手する。
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Causes of Carryover |
(理由)当初の予定よりも物品費を節約することができたため。 (使用計画)翌年度分として請求した助成金と合わせ、物品費、旅費、その他費として使用する計画である。
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Research Products
(17 results)