2018 Fiscal Year Research-status Report
アリールボロン酸と安息香酸からの光反応によるアリールラジカル生成と合成への応用
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17K05779
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
吉見 泰治 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (30345673)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アリールラジカル / アリールボロン酸 / 安息香酸 / 光誘起電子移動 / 有機光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
アリールラジカルは、ラジカルの不対電子が軌道にあるためシグマラジカルと呼ばれ、置換基による安定化を受けることができず非常に反応性が高くなる。その生成方法はハロゲン化アリール、スズ化合物とラジカル開始剤を用いた反応やCuやRh、Irなどの遷移金属とアリールジアゾニウム塩などの特殊な基質での反応だけが知られていた。このように制限された生成方法しか知られていないため、アリールラジカルを利用した合成方法の開発は遅れている。これに対して、アリルラジカルやt-ブチルラジカルのようなアルキルラジカルは、不対電子がパイ軌道にあるためパイラジカルと呼ばれ、超共役や共鳴により安定化されているので、様々な方法から容易に生成させることが可能であった。 本申請では、容易に入手可能なアリールボロン酸や安息香酸からの光誘起電子移動反応を利用したアリールラジカル生成方法の確立と、新規な合成反応への応用を検討する。本申請で基質として用いるアリールボロン酸は、鈴木―宮浦カップリング反応に必要な基質であるため、多種多様なアリールボロン酸が合成され、販売されている。さらに、安息香酸誘導体は天然に多く存在し、非常に安定な化合物である。本申請の結果、これらの容易に入手可能な基質から温和な条件でアリールラジカル生成が可能になった場合、アリールラジカルの反応性への理解だけでなく、様々な合成反応へ応用することができ、ラジカル反応の研究に大きく寄与する。さらに、有機化学だけでなくラジカル重合への応用を考えると高分子化学に対しても大きな波及効果が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
29、30年度に、アリールボロン酸から本光反応を用いたアリールラジカル生成に成功し、程よい収率でアルケンへの付加や還元反応が進行した。また、アリールラジカルが生成している直接的な証拠としてTEMPOラジカルトラッピングに成功し、様々なアリールラジカル生成ができるようになった。これらの結果を、論文に投稿し、Chem. Commun.に掲載された。また、30年度は安息香酸からのアリールラジカル生成に成功し、論文化に向けて実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
安息香酸のアリールラジカル生成に成功したので、このアリールラジカルを利用した合成反応の開発を行っている。例えば、生成させたアリールラジカルをジオキサンなどの水素原子を引き抜きやすい基質を用いることで、安定なラジカルを生成でき、合成反応に利用できるか検討している。また、触媒として可視光を吸収できるものを合成し、この安息香酸の脱炭酸反応に応用できるか検討している。
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Research Products
(11 results)