2020 Fiscal Year Research-status Report
有機エレクトロニクス素子を指向した多環式芳香環縮環アズレンの創出
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17K05780
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
庄子 卓 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (60581014)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アズレン / 縮環アズレン / 多環式芳香環 / 含窒素複素環 / 発光性色素 / エレクトロクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、前年度の研究をさらに発展させ『アズレンが縮環した多環式芳香族化合物の合成法の開発と物性解明』に取り組んだ。2H-シクロヘプタ[b]フラン-2-オン類とシクロヘキサノンやテトラロン誘導体から調製したエナミン類との[8 + 2]環化付加反応と続く芳香族化反応によってベンゾ[a]アズレンやナフトアズレン誘導体を合成し、その光学特性について検討した結果、これらの誘導体は酸性溶液中で顕著に色調が変化するハロクロミック挙動を示すことが明らかとなった。また発光挙動についても検討を行った結果、アズレン誘導体としては比較的高い量子収率を示すことが明らかとなった。 我々の以前の研究で開発した手法を用いて、縮環アズレン類の重要な前駆体となりうるエステル基を有さない (2-ベンゾフリル)アズレン類の合成法の効率的合成法についても開発を行い、その光学特性や電気化学特性について評価を行った。その結果、紫外可視吸光光度法において(2-ベンゾフリル)アズレン類は有機溶媒中ではアズレン自身よりもわずかに長波長領域に吸収帯を示す一方、酸性条件下では(2-ベンゾフリル)アズレン類の5員環のプロトン化によるトロピリウムイオンの生成により、長波長部に吸収帯を生じる顕著なハロクロミック挙動が観察された。さらに、発光挙動についても検討を行ったところ2-(2-ベンゾフリル)アズレンは、アズレン誘導体としては類例が少ない赤色発光を示すことが明らかになった。さらに、(2-ベンゾフリル)アズレン類のエレクトロクロミズム挙動を検討した結果、6-(2-ベンゾフリル)アズレンは可視領域において、可逆的且つ大きな吸収帯のスペクトル変化を示すことが明らかとなった。 さらに、アズレンにピリミドン、ピリミジン、キノロン、キノリン環等の含窒素複素環が縮環した誘導体の効率的合成法の開発についても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、前年度までの研究を発展的に継承して『さらに共役系が拡張したアズレン縮環型多環式芳香族化合物の合成法の開発と物性解明』を中心に研究を推進した。ベンゾ[a]アズレンやナフトアズレン誘導体の合成法の開発に成功し、吸収スペクトルや発光スペクトル等の実験による分光学的性質やボルタンメトリー実験や分光電気化学測定により電気化学性質を検討することで、今後の分子設計の指針を探索することができた。また、縮環アズレン類の前駆体となりうる(2-ベンゾフリル)アズレンやチエニルアズレン類の効率的合成法についても開発に成功することができた。また未発表の成果ではあるが、アズレンにピリミドン、ピリミジン、キノロン、キノリン環等の含窒素複素環が縮環した誘導体の効率的合成法を開発することもできた。しかしながら、昨今の感染症の問題のため研究活動を一時停止せざるをなくなったため、当初計画していた物性解明、特に分光学的性質解明に関して若干の遅れが生じた。以上の理由から、当初の計画よりも、本研究はやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、『共役系が拡張したアズレン縮環型多環式芳香族化合物の合成法の開発と物性解明』を継続し、官能基化されたアズレン縮環多環式芳香族化合物の合成を行い、その物性解明を重点的に実施する。また、2020年度に合成法を開発した(2-ベンゾフリル)アズレンやチエニルアズレン類を前駆体とした縮環アズレン誘導体への変換ならびに複素環縮環アズレン誘導体の合成法の開発も継続して研究を進める。これら新規に合成した縮環アズレン類の分光学的性質評価のため、各種スペクトル測定、量子化学計算さらに電気化学測定を行い、その物性評価を行う計画である。また2021年度が、本課題の最終年度であるため、研究成果のまとめも平行して推進する。
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Causes of Carryover |
本研究は有機化合物の合成研究を主体とするため、フラスコなどの実験器具類ならびに合成用試薬やクロマト用充填剤等の消耗品を中心に研究の進捗状況に合わせて購入した。2020年度においては、昨今の感染症の問題のため研究活動を一時停止せざるをなくなったため、当初見積額から予算を繰り越すことになった。当該年度に生じた繰越経費は本研究課題の目的を達成するため、2021年度にフラスコ類・クロマト管・還流冷却管等のガラス器具ならびに合成および測定用試薬、クロマト用充填剤としてシリカゲル・アルミナの購入として適切に使用する計画である。また、2021年度が本課題の最終年度であるため、学会発表および論文投稿経費等の研究発表経費としても使用する。
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