2019 Fiscal Year Research-status Report
エノラート種のクロス選択的・立体選択的・触媒的な酸化的カップリング
Project/Area Number |
17K05782
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
雨夜 徹 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20397615)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 酸化的カップリング / ボロンエノラート / バナジウム / 酸素酸化触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
エノラート種の選択的な酸化的クロスカップリング反応は、天然物や医薬品、機能材料およびそれらの前駆体に見られる非対称1,4-ジカルボニル化合物を合成するための最も直接的な方法であり、重要な反応である。また、同種の活性種同士を判別して2種の異なるエノラート種同士を反応させる必要があるため、その制御法の開発は基礎化学的な観点からも興味深い。本研究では、このエノラート種の酸化的クロスカップリング反応に着目し、クロス選択性や立体選択性の発現、さらにこの反応の触媒化を目指している。 我々は既に、エノラート種の酸化的クロスカップリング反応において、ボロンエノラートとシリルエノールエーテルの組み合わせで、酸化剤として高原子価バナジウム(V)を用いることで高いクロス選択性で反応が進行することを見出している。また、末端酸化剤として分子状酸素を用いたバナジウム(V)の触媒化にも知見を得ていた。今年度は、この触媒反応について、溶媒、スケールアップおよび基質の汎用性を調べた。その結果、溶媒としては、極性の低いジクロロメタンやトルエンが良好な結果を与えた。一方、アセトニトリルのような極性溶媒では低収率に留まった。グラムスケール反応では、20mol%のバナジウム(V)触媒存在下、分子状酸素をフローすることで、本酸化的クロスカップリング反応が良好な収率とクロス選択性で進行することを見出した。また、ボロンエノラートあるいはシリルエノールエーテルにおいて、アリールハライド部位を有する基質を検討したところ、F、ClおよびBrはこの反応で保たれることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子状酸素を末端酸化剤とする触媒的な酸化的クロスカップリングに目途が立ってきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出した分子状酸素を末端酸化剤とする酸化的クロスカップリングをより有用な反応にすべく、展開する。また、この反応のコンセプトを抽出し、高難度反応の開発に挑戦する。
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Causes of Carryover |
エノラートの触媒的酸化的カップリングの検討過程で、本反応がエノラートだけでなくアリルシランとの酸化的クロスカップリングにも適応できることが示唆される結果を得た。これをさらに検討することで、本酸化的クロスカップリングの幅が広がり、新展開の可能性が拓ける。したがって、期間を延長しこれを検討する。使用計画としては、主に研究に必要な試薬、溶媒、有機合成用の消耗品に充てる。また、情報収集および成果発表のための旅費、論文発表のための英文校正費、学会参加費にも使用する。
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Research Products
(3 results)