2018 Fiscal Year Research-status Report
潜在的フラストレーションを利用する開殻π電子系集積体の機能探索
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17K05783
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 修一 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (80433291)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ラジカルカチオン / 集合構造 / 色調変化 / スピン状態変化 / 相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電荷をもつ開殻π電子系分子 (ラジカルイオン) の集積状態における潜在的機能を創発することを目的としている。ラジカルイオン種において、不 対電子間の結合性相互作用および対イオンとの静電相互作用により特異な集積構造を形成する。一方でラジカルイオン種間においてはクーロン反発が働いていることから、集積構造には潜在的にフラストレーションが存在する。この潜在的にフラストレーションを絶妙にコントロールすることで、ラジカルイオン集積体の 新しい機能 (流動性ラジカル集積体、刺激による多重応答機能) を追求する。 本年度、フェノチアジンラジカルカチオンとジヒドロフェナジンラジカルイオンを用いたラジカルイオン塩の合成の検討と物性解明を行った。例えば、N-ブチルおよびN-ペンチルフェノチアジンラジカルイオン塩は、深緑色の結晶色から加熱に伴いオレンジ色の流動性物質に変化し、その後冷却することで、一旦オレンジ色の結晶性固体、ついで深緑色の結晶性固体へと変化した。この色変化と同時にオレンジ色では常磁性、深緑色状態では反強磁性的な性質を示すことが分かった。この過程は空気中で繰り返し起こることも明らか になっており、今後の研究発展がさらに見込まれる。アルキル基の種類の詳細を検討することで、今後の分子設計に関する知見を蓄積した。またジヒドロフェナジンラジカルイオン誘導体では、過冷却に伴うヒステリシスが幅広い温度範囲で起こることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほとんどのラジカルイオンの系において、安定性の観点から高温状態にさらすことはなかったが、本系において一部のラジカルイオン塩が比較的高温でも安定で あることが分かった。これにより、種々の物性評価の温度範囲が格段に広がり、予想外かつこれまでに報告例のない相転移挙動による色調とスピン状態変化の発見につながった。ラジカルイオンだけでなく、本設計手法はほかの相互作用系にも利用できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
色調変化とスピン変化が起こる系と起きない系の相違がまだ曖昧であることや、一部のラジカルイオン塩に限られていることから、応用可能性の拡大を含め、他 の誘導体の合成と性質の解明が急務である。
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Research Products
(20 results)