2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05786
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高石 和人 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (70513430)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ビナフチル / キロプティカル特性 / 軸性キラリティー / 円偏光発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、軸性キラルビナフチルまたはナフタレンオリゴマーを用いた円偏光発光色素の開発を行った。特に、既存の発光団を用いて円偏光発光性色素を創り出す方法の開発に重点を置き、以下の研究 (1), (2), (3) を進めた。 (1) 1,1’-ビナフチル-3,3’-ビピリジル環状化合物を合成した。これらは連結部位 (リンカー) の種類によって光学特性が大きく異なっていた。このうち、ビナフチル側から -CH2O- で連結した環状体は、プロトン化/脱プロトン化によって光物性のスイッチングが可能であり、蛍光性を保ったまま円偏光発光性のオン/オフを達成した。さらにX線結晶構造解析や理論計算により立体構造を明らかにした。 (2) ナフタレン四量体骨格にピレン、ペリレン、アントラセンを6つ導入した化合物を合成した。これらは全て、導入した芳香環のエキシマーに由来する強い円偏光発光性を示した。理論計算により、カルボニル酸素同士と芳香環同士の反発によって立体配座がある程度固定されていることが示された。ねじれたエキシマーの形成が強い円偏光発光性の発現に関与していることが考えられた。 (3) 軸性キラルナフタレン四量体を鍵中間体として、キラルペリキサンテノキサンテン (PXX) 類を合成した。隣り合う PXX 環同士をメチレンジオキシ基で架橋すると、溶液および固体状態で円偏光発光性を示した。理論計算により、架橋構造によって PXX 環同士は小さい角度に固定され、分子軌道に影響が及ぶことが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までにいくつかの優れた円偏光発光色素を開発した。それらの立体構造と発現機構を明らかにできた。さらに当初は想定していなかった円偏光発光のスイッチングに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず既に合成を達成した軸性キラル化合物について、立体構造およびキロプティカル特性をより深く調査し、それらの相関を明らかにする。ナフタレン四量体に発光団を導入する手法の汎用性を確認する。π拡張した軸性キラル化合物を合成し、さらなるキロプティカル特性向上を行う。外部刺激によって円偏光発光性が変化する化合物の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
有機合成や機器分析が当初予定していたより順調に進み、消耗品費が想定よりかからなかった。また機器の破損や故障も想定より少なかった。次年度は研究をより効率良く進行させるため、有機合成に必要な機器類を購入する。さらに、より積極的に学会等に参加し、研究成果を発表・公開する。
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