2017 Fiscal Year Research-status Report
Synthetic Application of Instable Reactive Intermediates
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17K05793
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
遠藤 恆平 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 准教授 (70454064)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機合成反応 / 金属クラスター / 光学材料 / 官能基化中間体 / 機能性材料 / 超分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、以下の項目について研究の進展があった。 (1)金属クラスターの調製と反応開発:独自の手法により、安定なPdのクラスターの新規調製法に成功し、触媒として、ギ酸を還元剤として用いるアルキン類の化学・立体選択的なアルケンへの還元反応を進行させることを見出した。本成果について、論文投稿準備中である。現在は、Pdクラスターの触媒機能の探索、さらには他の金属クラスターの調製などに取り組んでいる。 (2)シクロヘキサジエンの独自合成法の開発:シクロヘキサジエンの合成が簡便に進行することを見出し、様々な骨格構築に活用した。骨格構築法については、論文投稿準備中である。現在は、合成したシクロヘキサジエン誘導体の、光学材料や電子材料としての開発に取り組んでいる。 (3)多核金属錯体触媒を用いる反応開発:トリフルオロメチル/メチル基置換4級不斉炭素原子の構築法に適用し、高い基質汎用性を示すことができた。また、光学活性アリルシラン合成を達成した。以上については、論文投稿準備中である。今後も、様々な原料を用い、多核金属錯体触媒の機能を探索する予定である。 (4)アセタール化、その分解による酸素官能基化アリルホウ素化合物の合成と利用:アセタールの分解によってエノールエーテル化することで、二重結合上が酸素官能基化されたアリルホウ素化合物を立体選択的に得ることに成功し、さらに、アルデヒドのアリル化反応に用いることで、1,2-ジオール誘導体を合成した。また、生成物である1,2-ジオール誘導体から、分子内環化することで、多官能基化されたテトラヒドロフラン誘導体を、立体選択的に得ることに成功した。論文投稿準備中である。 (5)環状水素結合によるカゴ状分子の合成:分子の置換基の配向性などについて、一定の理解が進んだことで、新たな分子骨格を設計し、現在、合成に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)金属クラスターの調製法について、独自の手法の開発に成功した。当初は、ポリマーなどの担体が、金属クラスターの安定化に必須ではないかと考えていたが、結果として見出した調製法では、安定なクラスターとして得ることに成功した。また、独特の触媒機能を示すことが明らかになり、現状ではPdに限定的ではあるが、当初目的をほぼ達成したことになる。ただ、様々な反応、金属に本手法を適用し、開発を進めることで、次の展開に進む必要がある。(2)光学材料の合成については、様々な骨格に展開できることが明らかになった。また、その立体化学も、ほぼ完全に制御可能であることもわかった。今後は、光学材料として、実際に物性測定などに取り組む必要があるが、おおむね順調に研究は進んでいる。(3)多核金属錯体触媒については、これまでに見出した変換反応への展開については、問題なく成果となったが、さらに開発を進め、従来とは異なる知見を得るべく、今後、尽力する必要がある。(4)官能基化した中間体の合成などについては、鋭意、進めており、1つは論文投稿目前であることから、当初目的は達成しつつある。今後は、昨年度に得た知見を元に、さらに反応設計などに取り組む予定である。(5)カゴ状分子の合成については、いくつか具体的進展があったが、構造制御のために、新しい設計に取り組む必要性が出ている。過去の報告例などと照らし合わせると、有望な分子であることが明らかになったため、今年度中に合成を完了することを目標にしている。全体としては、特に目立った研究の遅れはなく、新しい指針や発見などもあったため、今年度以降、さらに研究を加速させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)金属クラスターの開発について、比較的、安定なPdクラスター調製法が確立したことから、Pd関連の触媒機能を探索する。また、その他の金属原子由来のクラスターの作成、触媒反応への適用を進める。(2)基本的には、剛直な構造を設計し、機能性材料としての基盤とすることが目標の1つである。一方で、その剛直構造を用いる光学材料や電子材料の開発を引き続き進めている。本研究は、比較的、網羅的に進める必要性を感じているが、候補化合物が明確になりつつあるため、まずはそれらの化合物の合成法、ならびに物性の測定を進める。(3)多核金属錯体触媒については、現在は開発進捗状況が早いわけではないが、反応に様々な工夫や要点を導入し、多核金属錯体触媒との相性や特異性を見出すべく研究を進める。(4)官能基化した中間体の合成については、当初目的は達成しつつあるため、新しいギミックの導入などを進め、中間体の多様化などを模索する。(5)前年度の研究結果に基づき、設計指針が明確になったことから、合成標的を可能な限り、早く合成する。合成ルート確立後、その化合物の修飾法など検討し、分子状のカプセルなどの安定供給を目指す。 その他、新しい試みにも取り組んでいる。具体的には、より大きな超分子である膜や、細胞のような形状を形成するベシクルの合成が可能であることが明らかになったため、その安定化に取り組んでいる。有機合成では、超分子ではあるが、比較的、小さなサイズの構造体の合成は得意だが、マイクロメートルスケールの、巨大な構造体の合成に向けた研究は難度が高い。本研究を足がかりとして、次の展開へと広げる候補化合物などの合成を進めている。
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Causes of Carryover |
小額ではあるが、未使用分が発生している。当初は全額を試薬などの購入に当てる予定であったが、研究進捗状況などと照らし合わせ、試薬などの安定性の面から、年度末に購入した、長期保管に適していない試薬を未使用のまま新年度に使用するより、新年度にて試薬購入にあてて継続的に研究を進めることが好ましいと判断した。そのため、一部を繰り越しとし、長期保存に適していない試薬類の購入を予定している。
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Research Products
(6 results)