2018 Fiscal Year Research-status Report
ルイス酸によるSi-H結合活性化メカニズムの包括的理解に向けた理論的検討
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17K05795
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
坂田 健 東邦大学, 薬学部, 教授 (90328922)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Si-C結合活性化 / DFT計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題であるSi-H結合活性化と密接に関連した,Si-C結合活性化に関して,そのメカニズムの検討をおこなった。 村上らは最近,N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒中でシラシクロブタンのSi-C結合が活性化されることを見いだし,この結果をもとにして,シラシクロブタンと二酸化炭素からシララクトンを生成する反応を報告した(Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 11399)。この反応は,溶媒である中性ルイス塩基が触媒としてはたらくことで,シラシクロブタンのSi-C結合が活性化され,カルバニオン中間体を経て進行しているものと考えられている。そこで,M06-2X/6-311G**レベルDFT計算により,Si-C結合活性化の反応経路の検討をおこなった。DMF一分子がシラシクロブタン一分子を直接に活性化する反応経路は,高い吸熱反応であった。それに対し,DMF一分子とシラシクロブタン二分子が関わる反応経路は,活性化エネルギーも低くなることがわかった。すなわち,複数のシラシクロブタン分子が関与することでSi-C結合が活性化されるメカニズムを提案することができた。この反応メカニズムは,ルイス酸を用いたSi-H結合活性化のメカニズムを逆の視点から考えることで解釈できるものである。このように,弱いルイス塩基であるDMFが,強いルイス塩基であるカルバニオン中心をつくりだす興味深い反応に関して,新規知見をみいだすことができた。 現在,論文公表に向けて準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属機関異動に伴い,計算機等の研究環境の移動・整備に時間を要した。そこで,今年度は当初の計画から軌道修正をおこない,研究課題に関連する内容について扱うこととし,一定の成果をあげつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,研究課題に関連する内容,すなわち,ルイス酸を用いたディールス・アルダー反応やS-C結合活性化メカニズムに関してこれまで得られている研究成果の早急な論文公表をめざす。その上で,それらで得られた新規知見をもとに,Si-H結合活性化のメカニズムに関して,当初の計画に沿って研究を推進する。
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